一般社団法人 自治体DX推進協議会

プレミアムデジタル商品券を通じて、地域経済の発展に貢献するとともに地域のDXを推進

デジタル化されたプレミアム商品券は、自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)における注目度の高い事業である。しかし、セキュリティの問題やデジタルデバイドの存在により、その推進が難しいという声も数多く聞かれる。
東京都目黒区で行われたプレミアム商品券のデジタル化事業において、エバーコネクト株式会社はブロックチェーン技術を活用したデジタルウォレットプラットフォームを提供した。これはブロックチェーンを基盤とした【Owlwallet】の独自の強みと、自治体や商店街、パートナー企業との連携、課題解決への真摯な取り組みによって実現された―。

 


 

エバーコネクト株式会社 代表取締役 吉田 敬一様

エバーコネクト株式会社
代表取締役 吉田 敬一 プロフィール
  • 学生時代に渡米し芸術とデザインを学ぶ。
  • 帰国後、ドイツ人が経営するデザインxテック企業ワンワールド株式会社を経て、ソニー企業、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)、グリー、CI&Tとクリエイティブからコンシューマーエレクトロニクス、モバイル通信、ソーシャルゲーム事業、コンサルティングでのキャリアを重ね2017年に起業。
  • 青山学院大学大学院 経営学修士課程修了 (MBA)



 

エバーコネクト株式会社 取締役 福田 徹様

エバーコネクト株式会社
取締役 福田 徹 プロフィール
  • 岡山大学卒業後、株式会社東芝に入社。
  • 自治体向け社会インフラシステムの国内・海外営業、商品企画、事業戦略立案などに携わる。
  • また、2011年から4年間、中国・北京に駐在し市場開拓を担当した。
  • エバーコネクトでは、事業戦略を担当している。
  • 青山学院大学大学院 経営学修士課程修了 (MBA)、東京女子大学非常勤講師。



 

 

―御社の事業内容やビジョン、自治体様との取組が始まるまでの経緯をお聞かせください

吉田

当社は「テクノロジーで世界をつなげる」を企業理念として掲げています。私たちのプロダクトを通じて、より良い社会と人々の幸福に貢献することを事業の基盤に置いています。私はこれまでテクノロジー系の会社に長く勤めていました。その頃インターネットやスマートフォンがどんどん普及していく中で、「より効果的に人と情報を繋ぐことで、もっと人々の生活や人生がより良いものになるのではないか」と考えたことが、創業の起点となっています。

 

エバーコネクト株式会社は2017年に事業を開始しました。主力事業はブロックチェーンを使用したデジタルウォレット事業で、【Owlwallet(オウルウォレット)】というブランドでデジタル商品券やデジタルクーポンを提供しています。創業当初は主に嗜好性に関するデータ解析を手がけていたのですが、2018年からブロックチェーンの研究開発に着手しました。

 

デジタルウォレット事業を始めたのは、感謝の気持ちをギフト券にしてプレゼントできる仕組みを作りたいと考え、デジタル商品券プラットフォームの開発に着手したことがきっかけです。最初は誰にとっても身近な「食」にフォーカスして、飲食市場に特化したサービスを展開していたのですが、正式リリースした直後に目黒区商店街連合会様から「商店街でも紙の商品券をデジタル化したい」というご相談を受けました。

 

商店街ですと、飲食店に限らず様々なお店で使えるデジタル商品券が必要になるため、商店街連合会様と協力・協業し利用者の声を元にスマートフォンアプリとプラットフォームに新しい機能を実装し、それを繰り返しながらサービスとして提供していく中で、今度は自治体の方から「目黒区でプレミアム商品券をデジタル化したい」というお声がかかったのです。

 

 

―自治体様向けデジタルウォレットサービスの概要について

吉田

基盤はブロックチェーンでできており、自治体のプレミアム商品券や商店街で流通するプレミアム商品券が使える仕組みを実装しています。基本的にはSaaSのプラットフォームとしてのご提供で、プラットフォームの上にAPI(※)をご用意しています。今はフロントエンドのアプリも垂直統合で自社開発していますが、他社様が開発されたアプリを我々のプラットフォームに繋ぎ込むことも可能です。バックエンドを開発する必要がないので、かなり短期間かつ低コストでデジタル商品券のオリジナルアプリをご提供できます。

 

※API:アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programming Interface)の略称。ソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐインターフェースのこと。

 

 

―バッグエンドにおけるデジタル商品券の処理と、ユーザー側のアプリおよび管理者向けダッシュボードをトータルでご提供されているということですね。自治体様向けの開発で特にこだわったポイントはありますか

吉田

もっとも重視したのは、住民と商店の双方が簡単に使える仕組みにすることです。従来のスマホアプリやテクノロジーを使ったサービスの多くは、顧客のセグメントを絞り込んで売っていく仕組みなので、ユーザーがスマートフォンを使いこなせることが大前提になります。一方で公的なサービスでは、パソコンやスマートフォンに不慣れな方でも使えるものでなければなりません。さらに、デジタルプレミアム商品券ではエンドユーザーである住民と商店の二者が顧客となるわけですが、商店では高齢化が進んでおりITに不慣れなケースが想定されます。普段は現金しか取り扱っていないお店も少なくありません。

 

そのような背景を踏まえて検討を重ねた結果、シンプルで誰でも簡単に使えるアプリをご用意し、店舗側はQRコードを置いておくだけで決済が完了する設計にしました。アプリのメニューは二つだけで、使いたい券種を選んで金額を入力すれば使えます。フルスクラッチで開発しているため、細かいご要望にも応えることができ、お客様から高く評価していただきました。基盤に使っている技術は同じですが、アプリや管理画面はそれぞれのニーズに合わせてオリジナルのものを開発してご提供できます。一方で、今後は複数の自治体様をカバーできる汎用アプリもご用意して、オリジナル版と汎用版の両軸で展開していく予定です。

住民にも商店にもやさしい目黒区デジタルプレミアム商品券の仕組み

 

 

―自治体プレミアム商品券のデジタル化事業において、御社ならではの強みとは

吉田

【Owlwallet】に採用しているブロックチェーンは、弊社システムが認可・認証した端末や機器でしかネットワークにアクセスできない「エンタープライズ向け」と呼ばれるタイプです。そのため、よりセキュアにネットワークを立ち上げることができます。お金と同等の価値を持つプレミアム商品券を扱うにあたって、セキュリティの担保は必須事項ですから、自治体様にも住民や商店の方々にもご安心いただけるポイントだと考えております。

 

 

 

データ解析の技術を活かし、さらに価値のある事業へ

―一連の取組で自治体様からフィードバックされた内容や、これから改善・追加予定の機能等があれば教えてください

福田

アプリは機能をミニマムに抑えることで、使いやすいものになっていると思いますので、当社としては金額の集計や振込といったバックヤード業務の自動化を、今後さらに進めていく予定です。また、利用者数をデイリーで閲覧できるダッシュボードなど、自治体様の労力削減に繋がる仕組みを構築していきたいと考えています。

 

吉田

デジタル集計という観点で言えば、紙商品券を導入して、バックヤードの業務だけをデジタル化するという方法も提供しています。紙商品券をデジタル集計する場合は、商品券にあらかじめQRコードを印字しておき、会計時にお店の方にアプリで読み込んでいただきます。そうすると、どのお店でどの番号の商品券が使われたのか、全てデジタル集計することが可能です。お店の方が換金のために銀行窓口に足を運ぶ必要もありませんので、振込までの期間が大幅に短縮されます。また、使用枚数が多い店舗ではQRコードを読み込む作業が大変なので、スキャナーで一気に読み込む仕組みをパートナー企業で開発し提供しています。事務局に郵送していただければ、数百枚・数千枚単位の商品券も一気に集計できますので、小規模店だけではなく大量に使うお店でも対応が可能です。

 

 

―最初は集計だけ、次に紙とデジタルの併用、最終的には完全デジタル化と、徐々にステップアップしていけそうですね。今後の中長期的な計画としては、どのような展望を持たれていますか

吉田

現状は目黒区様のほか、群馬県の高崎商科大学様を通じて、下仁田町様、富岡市様、藤岡市様に【Owlwallet】の仕組みを導入、ご利用いただいております。三重県の桑名市様でも実証実験を行いました。今後はさらに複数の自治体様へ展開していくことが、直近のミッションになります。前述したバックヤード業務のデジタル化を進めることで、自治体様の作業も大きく軽減されます。並行して進めたいのが、データ解析になります。【Owlwallet】に蓄積したデータを解析し、消費者行動の分析、地域経済の活性化、ウェルビーイングの向上等に貢献できる方法を模索したいと考えています。

 

さらに次の段階として、データから嗜好分析をする技術を取り入れたいと思っています。これこそが、弊社が特許を取得している技術です。消費行動から個人の嗜好を読み解き、その人にフィットするものをこちらから提案していきます。たとえば地産地消を意識したお店でのご利用が多い方は、SDGsにも関心がある可能性が高いので、関連性の高いお店や取組をご紹介していく等です。昨今注目を集めているSDGsやウェルビーイング等の分野と上手く結び付ければ、より面白く価値のあるデータマーケティングが実現できるでしょう。

 

自治体様目線で見ると、各地域の強みや特性に合致する人を引き寄せて地域経済を活性化し、商店はもちろん住民も幸せになるような仕組みですね。「このエリアに居住している人は、ヘルスケアに関心のある人が多い」等の分析もできると思います。逆に、消費行動から健康状態に不安のある方を発見して、ヘルシーな食事や運動をおすすめしていくような動きも、これからの世の中では求められてくるのではないでしょうか。

 

 

―最後に、自治体DXに関する思いとメッセージをお願いします

福田

紙の商品券をデジタルにするのは、あくまで「デジタル化」の範疇です。そこからトランスフォーメーションをするにあたって、データ活用という領域でも多分に貢献したいと考えているので、多くの企業様や自治体様と一緒に取り組んでいけましたら幸いです。

 


 

吉田

プレミアム商品券事業が主眼に置いているのは「経済効果」ですが、目黒区様等との取り組みを通じて、地域住民の方達と商店のDX化に大きく寄与できることを実感しました。日本がIT化で先進国に遅れを取ってしまったのは、国民一人ひとりのDXが進んでいないことが大きな要因の一つだと考えられます。だからこそ、テクノロジーの企業として地域の経済活性化を図ると同時に、住民や商店のDX推進・底上げにも貢献できるのは、大変光栄なことです。自治体様の業務効率化や工数の削減にお役立ていただきつつ、実際のサービスを通じて住民や商店のDX化を推進していきます。ぜひ一緒により素晴らしい社会を創りにいきましょう。

ブロックチェーン技術で実現する高いセキュリティ性


 

地域通貨をはじめ、多様なデジタルウォレット事業に対応

 

 

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デジタルウォレットSaaSプラットフォーム Owlwallet

https://owlwallet.jp/

 

エバーコネクト株式会社 会社概要

設立:2014年2月 事業開始:2017年7月

事業内容:ブロックチェーン技術を使ったデジタルウォレット「Owlwallet」の開発と運営

(デジタル商品券・クーポン・循環型ポイント・地域通過など)

情報セキュリティマネジメント

「ISO/IEC 27001:2022」認証取得
適用規格:ISO/IEC 27001:2022
審査登録証:JP23/00000202
認証機関:SGSジャパン株式会社
認証登録日:2023年06月19日

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