一般社団法人 自治体DX推進協議会

自治体営業を成功させる7つの法則

自治体と事業者を繋ぎ、DXで地方創生を実現する
一般社団法人 自治体DX推進協議会

はじめに

地方自治体が抱える課題が複雑化・多様化する中、その解決には民間企業の力が不可欠となっています。自治体ビジネスは、地域課題の解決と企業の収益化を両立する、大きな可能性を秘めた市場です。しかし、自治体特有の意思決定プロセスや予算制度、担当者との関係構築など、自治体営業には多くの困難が伴います。

実際、多くの企業が自治体営業に乗り出すものの、その壁の高さに挫折してしまうケースが少なくありません。自治体の担当者に会うこと自体が難しかったり、何度も足を運んでもなかなか案件が進まなかったりと、苦労を重ねる企業担当者の姿が思い浮かびます。

しかし、そんな中でも自治体営業で着実に成果を上げている企業があるのも事実です。彼らは、自治体特有のルールや意思決定プロセスを理解し、それに合わせた営業手法を実践しています。また、自治体の抱える課題に真摯に向き合い、自社の強みを活かしたソリューションを提案することで、自治体との信頼関係を構築しているのです。

本記事では、自治体営業の第一線で活躍する専門家の知見をもとに、自治体営業を成功に導く7つの法則を紹介します。自治体営業の基本的な考え方から、具体的な営業手法まで、実践的なノウハウを詰め込んでいます。自治体営業に取り組む企業の担当者はもちろん、これから自治体ビジネスに参入しようと考えている企業にとっても、必読の内容となっているはずです。

自治体営業は決して簡単な道のりではありませんが、その先に待っているのは、地域課題の解決と社会的意義の高いビジネスの実現です。ぜひ本記事を手に取り、自治体営業の極意を学んでいただければと思います。地域に根ざし、地域と共に成長するビジネスを目指して、自治体営業にチャレンジしてみませんか。

法則1:リサーチを徹底し、ターゲットを絞り込む

自治体営業で成果を上げるには、まずは徹底的なリサーチが不可欠です。自治体は民間企業とは異なる特性を持っており、地域ごとに抱える課題も大きく異なります。自社の商品・サービスが、どの自治体のどのような課題に対して価値を提供できるのかを明確にすることが重要です。

自治体の基本情報を収集する

リサーチの第一歩は、自治体の基本情報を収集することから始まります。人口規模、産業構造、財政状況など、自治体の概要を把握することで、営業戦略の大枠を描くことができます。例えば、人口減少が深刻な自治体であれば、地域の活性化に関連する商品・サービスが求められる可能性が高いですし、財政状況が厳しい自治体であれば、コスト削減に寄与するソリューションが有効かもしれません。

自治体の具体的な課題や取り組みを調査する

次に、自治体の具体的な課題や取り組みを調査します。自治体のホームページや広報誌、首長の施政方針演説などから、自治体が重要視している施策や直面している課題を読み取ります。また、地方紙やローカルニュースなども情報源として有効です。地域の話題やトレンドを把握することで、自治体の課題認識や住民のニーズを理解することができます。

さらに、自治体の予算書や決算書、議会議事録なども重要な情報源となります。予算の配分状況から、自治体の政策的な優先順位を知ることができますし、議会での議論から、自治体内の意思決定プロセスや各部署の関心事項を読み解くことができます。加えて、類似自治体の先進事例を調査することも有効です。全国の自治体は、人口規模や産業構造、地理的条件など、何らかの共通点を持っています。先進自治体の取り組みを参考にすることで、自社の商品・サービスの活用可能性を探ることができます。

ターゲットを絞り込む

こうして収集した情報をもとに、自社の強みを活かせる自治体を抽出し、ターゲットを絞り込んでいきます。営業リストを作成し、優先順位をつけることで、効率的かつ効果的なアプローチが可能となります。ただし、リサーチは一度きりではなく、営業活動を進める中で常にアップデートしていく必要があります。自治体の課題や方針は刻一刻と変化するため、最新の情報を追跡し、営業戦略に反映させることが求められます。

徹底的なリサーチは、自治体営業の成功に欠かせない第一歩です。自治体の特性や地域課題を深く理解することで、自社の強みを最大限に活かせる営業戦略を立てることができます。リサーチに十分な時間と労力を投じることが、自治体営業を成功に導く鍵となるのです。

法則2:自治体の予算編成とニーズを理解する

自治体の意思決定において、予算は非常に重要な要素です。自治体の予算は、税収や国からの交付金などを主な財源としており、その使途は議会での議決を経て決定されます。自治体営業では、この予算編成のサイクルと仕組みを理解することが不可欠です。

予算編成のサイクルを把握する

自治体の予算編成は通常、年度末から年度初めにかけて行われます。具体的には、10月ごろから各部署が次年度の事業計画と予算要求を作成し、財政部門との調整を経て、12月から1月にかけて予算案が固まります。そして、2月から3月にかけて議会で審議・議決され、新年度の予算が成立します。

この予算編成のサイクルに合わせて、自治体営業を進めていく必要があります。予算要求が行われる10月以前に、自社の商品・サービスの提案を行い、課題解決に向けた議論を重ねることが理想的です。また、予算編成の最終段階では、予算案に盛り込まれるよう、粘り強く交渉することも重要です。

予算獲得の手法を探る

ただし、自治体の予算は使途が限定されている場合が多く、新たな事業を実施するには、既存予算の振り替えや補助金の活用が必要となります。特に、昨今の自治体財政は厳しい状況にあり、新規事業への予算配分は限られています。そのため、自治体の予算制度を理解し、予算獲得の手法を探ることが求められます。

補助金は、自治体の予算を補完する重要な財源です。国や都道府県が様々な目的で設けている補助金を活用することで、自治体の予算負担を軽減しつつ、新規事業を推進することができます。補助金の情報は、各省庁のホームページや自治体の担当部署から入手することができます。補助金の対象事業や申請手続きを確認し、自社の商品・サービスとのマッチングを図ることが重要です。

また、自治体の予算編成では、各部署の要求をまとめる企画部門や財政部門の役割が大きくなります。これらの部署と良好な関係を構築することで、予算獲得の可能性が高まります。部署間の調整や予算の優先順位付けに関する情報を入手し、営業戦略に活かすことも有効です。

自治体のニーズを的確に捉える

自治体のニーズを的確に捉え、予算獲得につなげるには、担当者との綿密なコミュニケーションが欠かせません。単に自社の商品・サービスを売り込むのではなく、自治体の抱える課題や目指す方向性を深く理解し、それを実現するための手段として提案することが重要です。担当者との信頼関係を構築し、課題解決に向けた伴走者となることで、予算獲得の道筋が見えてくるはずです。

自治体の予算編成とニーズを理解することは、自治体営業の要諦です。予算編成のサイクルや仕組みを把握し、補助金の活用や庁内調整の手法を探ることで、自社の商品・サービスの導入を実現することができます。自治体のニーズに寄り添い、課題解決に向けた提案を重ねることが、予算獲得の近道となるのです。

法則3:担当者とのコミュニケーションを大切にする

自治体営業において、担当者との信頼関係構築は極めて重要です。自治体の意思決定プロセスは複雑で時間がかかるため、担当者との継続的なコミュニケーションが不可欠となります。単に営業トークを繰り返すのではなく、担当者の考えや悩みに真摯に耳を傾け、共感することが求められます。

担当者の立場に立って考える

自治体の担当者は、日々の業務に追われる中で、様々な課題や悩みを抱えています。限られた予算や人員の中で、住民の多様なニーズに応えなければならないというプレッシャーは、我々の想像以上に大きいものがあります。そのような担当者の立場に立って、課題解決に向けたサポートを提案することが、信頼関係構築の第一歩となります。

また、自治体の担当者は、地域への愛着が強い方が多いという特徴があります。自治体職員の多くは、地域の出身者であったり、長年その地域に暮らしていたりします。地域の歴史や文化、住民の生活に精通しているからこそ、地域課題の解決に熱心に取り組んでいるのです。

地域への理解と愛着を示す

営業担当者も、地域に対する理解と愛着を示すことが求められます。地域のお祭りや行事に足を運ぶ、地元の飲食店を利用するなど、地域に溶け込む努力が信頼関係の構築につながります。また、地域の歴史や文化、産業などについて学び、担当者との会話に積極的に取り入れることも効果的です。

誠実な対応を心がける

加えて、自治体の担当者は公務員という立場上、慎重な姿勢を崩せない側面があります。民間企業との付き合いには、常に公平性や透明性が求められます。営業担当者は、担当者の立場を理解し、誠実な対応を心がける必要があります。飲食を伴う接待や過度な贈答品の提供は、担当者を困惑させるだけでなく、信頼関係を損ねる恐れがあります。

一方で、担当者との良好な関係を築くためには、適度な距離感も重要です。営業担当者と担当者が、公私混同と誤解されるような近しい関係になることは避けなければなりません。あくまでビジネスパートナーとしての関係を保ちつつ、課題解決に向けて協力していくことが求められます。

信頼関係構築のために

信頼関係の構築には、時間と労力がかかるものです。しかし、その努力は必ず報われます。担当者との信頼関係が深まれば、自社の提案に真摯に耳を傾けてもらえるようになります。課題解決に向けた建設的な議論を重ね、共にプロジェクトを進めていくことができるようになるのです。

自治体営業で成果を上げるには、担当者とのコミュニケーションが鍵を握ります。担当者の立場に立って課題解決を提案し、地域への理解と愛着を示すことで、信頼関係を構築することができます。営業担当者の誠実な姿勢と熱意が、自治体との連携を実現する原動力となるのです。

法則4:庁内での横展開を促進する

自治体は縦割り組織であるため、一つの部署だけでは新たな取り組みを進めることが難しい場合があります。特に、ICTの導入や業務改革など、全庁的な取り組みが求められるプロジェクトでは、部署間の連携が不可欠となります。自治体営業で成果を上げるには、庁内での横展開を促進し、部署間の協力体制を構築することが重要です。

全庁的な課題解決につなげる

庁内での横展開を進めるためには、まず自社の商品・サービスが、自治体全体の課題解決に貢献できることを示す必要があります。特定の部署の課題解決にとどまらず、自治体が目指す将来像の実現に寄与するソリューションであることをアピールします。

例えば、自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する商品・サービスを提案する場合、単に業務の効率化だけでなく、住民サービスの向上や地域の活性化につながる点を強調します。ICTの導入が、自治体の様々な施策を推進する基盤となることを説明し、全庁的な取り組みの必要性を訴求するのです。

また、自社の商品・サービスが、自治体の上位計画や総合計画などの施策に合致していることを示すことも効果的です。自治体の総合計画や各種計画書を確認し、自社の提案がその目標達成に資することを説明します。自治体の方向性と自社の提案を紐づけることで、庁内での理解と協力を得やすくなります。

キーパーソンとの関係構築

庁内での横展開を促進するには、キーパーソンの存在が重要となります。首長や副首長、企画部門の責任者など、自治体の意思決定に大きな影響力を持つ人物と良好な関係を築くことが求められます。キーパーソンの理解と支持を得ることで、庁内の調整がスムーズに進むようになります。

キーパーソンへのアプローチには、トップセールスが効果的です。経営者や役員クラスが直接、自治体のキーパーソンに会って提案することで、事業の重要性と会社の本気度を伝えることができます。また、トップ同士の信頼関係が構築されれば、事業の推進力が格段に高まります。

セミナーやワークショップの開催

さらに、庁内の横展開を促進するための具体的な方法として、セミナーやワークショップの開催が挙げられます。自社の商品・サービスに関連する課題をテーマに、庁内の様々な部署に参加を呼びかけます。セミナーやワークショップを通じて、課題認識の共有や部署間の情報交換を図ることができます。

特に、ワークショップの形式で各部署の担当者に参加してもらうことで、自治体側の主体性を引き出すことができます。自治体の担当者自身が、自社の商品・サービスを活用したアイデアを出し合うことで、導入への機運が高まります。また、ワークショップでの議論を通じて、部署間の連携の必要性や具体的な協力体制についても検討することができます。

セミナーやワークショップには、自社だけでなく、他の企業や専門家を招くことも有効です。多様な視点から課題解決の方法を議論することで、自社の提案の優位性を際立たせることができます。また、他の企業との連携により、自社の弱みを補完し、より総合的なソリューションを提案することも可能となります。

各部署の担当者との丁寧なコミュニケーション

庁内での横展開を進める過程では、各部署の担当者との丁寧なコミュニケーションが欠かせません。各部署の抱える課題や要望をヒアリングし、自社の提案への理解を深めてもらうことが重要です。また、各部署の担当者を巻き込んで、具体的な導入プランを検討することで、事業の実現可能性を高めることができます。

自治体営業で成果を上げるには、庁内全体を巻き込んだ取り組みが不可欠です。自社の提案を全庁的な課題解決につなげ、キーパーソンとの関係構築や部署間の連携を促進することが求められます。セミナーやワークショップを活用し、自治体の主体性を引き出すことで、事業の推進力を高めることができるでしょう。

法則5:地域企業とのパートナーシップを構築する

自治体営業を進める上で、地域企業とのパートナーシップ構築も重要な要素となります。地域企業は、地域の実情に精通し、自治体とのネットワークを持っているため、自社の提案を自治体に浸透させる上で大きな役割を果たします。また、地域企業との連携により、自社の商品・サービスに地域ならではの付加価値を与えることができます。

地域企業との信頼関係づくり

自治体は、地域経済の活性化を重要な政策課題の一つとして掲げています。地元企業の育成や地域産業の振興に力を入れており、地域企業との連携を歓迎する傾向にあります。この点を踏まえ、自治体営業では地域企業とのパートナーシップ構築を積極的に進めることが求められます。

パートナーシップ構築の第一歩は、地域企業との信頼関係づくりです。地域企業の経営者や担当者と直接会って、自社の事業内容や自治体営業の取り組みについて説明します。その際、地域企業の事業内容や強み、自治体とのつながりについても情報収集します。互いの強みを理解し、Win-Winの関係を築くことを目指します。

具体的な連携方法の検討

信頼関係が構築できたら、具体的な連携の方法を検討します。自社の商品・サービスを地域企業と協力して提供したり、地域企業の技術やノウハウを活用したりするなど、様々な連携の形が考えられます。例えば、自社のICTソリューションと地域企業の業務知識を組み合わせることで、より地域に根ざしたサービスを提案できるかもしれません。

地域企業との連携により、自治体営業の説得力が増すことも期待できます。地域企業との協力体制を示すことで、自社の提案が地域経済の活性化に寄与することをアピールできます。また、地域企業の持つ自治体とのパイプを活用することで、自社の提案を自治体に効果的に届けることができます。

地域企業の選定

パートナーシップ構築においては、地域企業の選定も重要なポイントとなります。自社の事業内容や目指す方向性と合致する企業を探すことが基本ですが、自治体との関係性も考慮する必要があります。自治体から信頼され、実績のある地域企業とのパートナーシップは、自社の信用力を高める効果が期待できます。

情報やノウハウの獲得

また、地域企業とのパートナーシップは、自社単独では得られない情報やノウハウを獲得する機会にもなります。地域企業との対話を通じて、地域の産業構造や商習慣、住民のニーズなど、地域ならではの情報を入手することができます。これらの情報は、自社の提案をブラッシュアップする上で貴重な材料となります。

地域企業との連携には、時間と労力がかかることも事実です。お互いの企業文化や働き方の違いを調整し、信頼関係を構築するまでには、一定の時間を要します。しかし、その先には、地域に根ざしたビジネスの実現という大きな可能性が広がっています。

自治体営業において、地域企業とのパートナーシップ構築は欠かせない要素の一つです。地域企業との信頼関係を築き、互いの強みを活かした連携を実現することで、自社の提案力を高めることができます。地域企業との協力体制は、自治体との信頼関係構築にも寄与し、ビジネスの成功確率を高めてくれるはずです。

法則6:導入後の運用・サポートまでを見据える

自治体営業では、商品・サービスの販売だけでなく、導入後の運用・サポートまでを見据えた提案が求められます。自治体は、長期的な視点で事業を評価する傾向にあるため、導入後のフォローが重要となります。また、自治体の業務は継続性が求められるため、安定的な運用体制の構築が不可欠です。

運用サポートと職員研修の提案

自治体への導入においては、職員の ICT スキルの問題が障壁となることがあります。自治体の職員は、必ずしも ICT に精通しているわけではありません。新しいシステムやツールの導入に際して、操作方法の習得や業務への適用に不安を感じる職員も少なくありません。

この点を踏まえ、自治体営業では導入後の運用サポートや職員研修までを含めた提案が効果的です。操作マニュアルの作成や、職員向けの研修プログラムの提供など、自治体の運用体制を支援する施策を盛り込むことで、自社の提案に説得力が増します。

特に、大規模なシステム導入や業務改革を伴うプロジェクトでは、丁寧な運用サポートが欠かせません。自治体の業務に合わせたシステムのカスタマイズや、課題に応じた追加開発など、きめ細かなサポート体制を用意することが求められます。運用開始後も、定期的な報告会や改善提案など、自治体との継続的なコミュニケーションが重要となります。

業務プロセスへの組み込み

また、自社の商品・サービスが自治体の業務に欠かせない存在となるよう、業務プロセスへの組み込みを提案することも有効です。例えば、住民サービスの手続きにおいて自社のシステムを活用するよう提案したり、自治体の計画策定に自社の分析ツールを用いるよう提案したりするなど、業務の中核に自社の商品・サービスを位置づけることで、長期的な利用を見込むことができます。

導入実績の蓄積と活用

自治体営業では、導入実績が重要な評価指標となります。類似自治体での導入事例を示すことで、自社の提案の妥当性を裏付けることができます。加えて、導入自治体での活用事例を丁寧にフォローし、成果をまとめることも重要です。自社の商品・サービスが自治体の課題解決に貢献した事例は、他の自治体への営業活動でも強力なツールとなります。

導入実績を重ねることで、自社の商品・サービスの機能改善や新たなサービス開発にもつなげることができます。自治体の現場から得られる意見やニーズは、サービスのブラッシュアップに欠かせない情報源となります。自治体との継続的な関係を通じて、自社の商品・サービスを進化させていくことが求められます。

他自治体への横展開

さらに、自治体営業で培ったノウハウを、他の自治体にも横展開していくことが重要です。ある自治体で成果を上げたサービスを、他の自治体にも提案することで、ビジネスの拡大を図ることができます。自治体間の情報交換は活発に行われているため、優良事例は口コミで広がる可能性もあります。

自治体営業は、一過性の売り上げを追求するのではなく、自治体との長期的なパートナーシップを通じて、持続的な成長を目指すことが肝要です。導入後の運用・サポートまでを見据えた提案を行い、自治体の課題解決に全力で取り組む姿勢が求められます

2>法則4:庁内での横展開を促進する

自治体は縦割り組織であるため、一つの部署だけでは新たな取り組みを進めることが難しい場合があります。特に、ICTの導入や業務改革など、全庁的な取り組みが求められるプロジェクトでは、部署間の連携が不可欠となります。自治体営業で成果を上げるには、庁内での横展開を促進し、部署間の協力体制を構築することが重要です。

自社提案の全庁的な価値をアピールする

庁内での横展開を進めるためには、まず自社の商品・サービスが、自治体全体の課題解決に貢献できることを示す必要があります。特定の部署の課題解決にとどまらず、自治体が目指す将来像の実現に寄与するソリューションであることをアピールします。

例えば、自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する商品・サービスを提案する場合、単に業務の効率化だけでなく、住民サービスの向上や地域の活性化につながる点を強調します。ICTの導入が、自治体の様々な施策を推進する基盤となることを説明し、全庁的な取り組みの必要性を訴求するのです。

また、自社の商品・サービスが、自治体の上位計画や総合計画などの施策に合致していることを示すことも効果的です。自治体の総合計画や各種計画書を確認し、自社の提案がその目標達成に資することを説明します。自治体の方向性と自社の提案を紐づけることで、庁内での理解と協力を得やすくなります。

キーパーソンとの関係構築

庁内での横展開を促進するには、キーパーソンの存在が重要となります。首長や副首長、企画部門の責任者など、自治体の意思決定に大きな影響力を持つ人物と良好な関係を築くことが求められます。キーパーソンの理解と支持を得ることで、庁内の調整がスムーズに進むようになります。

キーパーソンへのアプローチには、トップセールスが効果的です。経営者や役員クラスが直接、自治体のキーパーソンに会って提案することで、事業の重要性と会社の本気度を伝えることができます。また、トップ同士の信頼関係が構築されれば、事業の推進力が格段に高まります。

セミナーやワークショップの開催

さらに、庁内の横展開を促進するための具体的な方法として、セミナーやワークショップの開催が挙げられます。自社の商品・サービスに関連する課題をテーマに、庁内の様々な部署に参加を呼びかけます。セミナーやワークショップを通じて、課題認識の共有や部署間の情報交換を図ることができます。

特に、ワークショップの形式で各部署の担当者に参加してもらうことで、自治体側の主体性を引き出すことができます。自治体の担当者自身が、自社の商品・サービスを活用したアイデアを出し合うことで、導入への機運が高まります。また、ワークショップでの議論を通じて、部署間の連携の必要性や具体的な協力体制についても検討することができます。

セミナーやワークショップには、自社だけでなく、他の企業や専門家を招くことも有効です。多様な視点から課題解決の方法を議論することで、自社の提案の優位性を際立たせることができます。また、他の企業との連携により、自社の弱みを補完し、より総合的なソリューションを提案することも可能となります。

各部署の担当者とのコミュニケーション

庁内での横展開を進める過程では、各部署の担当者との丁寧なコミュニケーションが欠かせません。各部署の抱える課題や要望をヒアリングし、自社の提案への理解を深めてもらうことが重要です。また、各部署の担当者を巻き込んで、具体的な導入プランを検討することで、事業の実現可能性を高めることができます。

自治体営業で成果を上げるには、庁内全体を巻き込んだ取り組みが不可欠です。自社の提案を全庁的な課題解決につなげ、キーパーソンとの関係構築や部署間の連携を促進することが求められます。セミナーやワークショップを活用し、自治体の主体性を引き出すことで、事業の推進力を高めることができるでしょう。

法則5:地域企業とのパートナーシップを構築する

自治体営業を進める上で、地域企業とのパートナーシップ構築も重要な要素となります。地域企業は、地域の実情に精通し、自治体とのネットワークを持っているため、自社の提案を自治体に浸透させる上で大きな役割を果たします。また、地域企業との連携により、自社の商品・サービスに地域ならではの付加価値を与えることができます。

地域企業との信頼関係づくり

自治体は、地域経済の活性化を重要な政策課題の一つとして掲げています。地元企業の育成や地域産業の振興に力を入れており、地域企業との連携を歓迎する傾向にあります。この点を踏まえ、自治体営業では地域企業とのパートナーシップ構築を積極的に進めることが求められます。

パートナーシップ構築の第一歩は、地域企業との信頼関係づくりです。地域企業の経営者や担当者と直接会って、自社の事業内容や自治体営業の取り組みについて説明します。その際、地域企業の事業内容や強み、自治体とのつながりについても情報収集します。互いの強みを理解し、Win-Winの関係を築くことを目指します。

連携の具体的な方法を検討する

信頼関係が構築できたら、具体的な連携の方法を検討します。自社の商品・サービスを地域企業と協力して提供したり、地域企業の技術やノウハウを活用したりするなど、様々な連携の形が考えられます。例えば、自社のICTソリューションと地域企業の業務知識を組み合わせることで、より地域に根ざしたサービスを提案できるかもしれません。

自治体営業における説得力の向上

地域企業との連携により、自治体営業の説得力が増すことも期待できます。地域企業との協力体制を示すことで、自社の提案が地域経済の活性化に寄与することをアピールできます。また、地域企業の持つ自治体とのパイプを活用することで、自社の提案を自治体に効果的に届けることができます。

地域企業の選定と情報収集

パートナーシップ構築においては、地域企業の選定も重要なポイントとなります。自社の事業内容や目指す方向性と合致する企業を探すことが基本ですが、自治体との関係性も考慮する必要があります。自治体から信頼され、実績のある地域企業とのパートナーシップは、自社の信用力を高める効果が期待できます。

また、地域企業とのパートナーシップは、自社単独では得られない情報やノウハウを獲得する機会にもなります。地域企業との対話を通じて、地域の産業構造や商習慣、住民のニーズなど、地域ならではの情報を入手することができます。これらの情報は、自社の提案をブラッシュアップする上で貴重な材料となります。

長期的な視点に立ったパートナーシップ

地域企業との連携には、時間と労力がかかることも事実です。お互いの企業文化や働き方の違いを調整し、信頼関係を構築するまでには、一定の時間を要します。しかし、その先には、地域に根ざしたビジネスの実現という大きな可能性が広がっています。

自治体営業において、地域企業とのパートナーシップ構築は欠かせない要素の一つです。地域企業との信頼関係を築き、互いの強みを活かした連携を実現することで、自社の提案力を高めることができます。地域企業との協力体制は、自治体との信頼関係構築にも寄与し、ビジネスの成功確率を高めてくれるはずです。

法則6:導入後の運用・サポートまでを見据える

自治体営業では、商品・サービスの販売だけでなく、導入後の運用・サポートまでを見据えた提案が求められます。自治体は、長期的な視点で事業を評価する傾向にあるため、導入後のフォローが重要となります。また、自治体の業務は継続性が求められるため、安定的な運用体制の構築が不可欠です。

自治体の ICT スキルを考慮した提案

自治体への導入においては、職員の ICT スキルの問題が障壁となることがあります。自治体の職員は、必ずしも ICT に精通しているわけではありません。新しいシステムやツールの導入に際して、操作方法の習得や業務への適用に不安を感じる職員も少なくありません。

この点を踏まえ、自治体営業では導入後の運用サポートや職員研修までを含めた提案が効果的です。操作マニュアルの作成や、職員向けの研修プログラムの提供など、自治体の運用体制を支援する施策を盛り込むことで、自社の提案に説得力が増します。

きめ細かな運用サポート

特に、大規模なシステム導入や業務改革を伴うプロジェクトでは、丁寧な運用サポートが欠かせません。自治体の業務に合わせたシステムのカスタマイズや、課題に応じた追加開発など、きめ細かなサポート体制を用意することが求められます。運用開始後も、定期的な報告会や改善提案など、自治体との継続的なコミュニケーションが重要となります。

業務プロセスへの組み込み

また、自社の商品・サービスが自治体の業務に欠かせない存在となるよう、業務プロセスへの組み込みを提案することも有効です。例えば、住民サービスの手続きにおいて自社のシステムを活用するよう提案したり、自治体の計画策定に自社の分析ツールを用いるよう提案したりするなど、業務の中核に自社の商品・サービスを位置づけることで、長期的な利用を見込むことができます。

導入実績の重要性

自治体営業では、導入実績が重要な評価指標となります。類似自治体での導入事例を示すことで、自社の提案の妥当性を裏付けることができます。加えて、導入自治体での活用事例を丁寧にフォローし、成果をまとめることも重要です。自社の商品・サービスが自治体の課題解決に貢献した事例は、他の自治体への営業活動でも強力なツールとなります。

継続的な改善と横展開

導入実績を重ねることで、自社の商品・サービスの機能改善や新たなサービス開発にもつなげることができます。自治体の現場から得られる意見やニーズは、サービスのブラッシュアップに欠かせない情報源となります。自治体との継続的な関係を通じて、自社の商品・サービスを進化させていくことが求められます。

さらに、自治体営業で培ったノウハウを、他の自治体にも横展開していくことが重要です。ある自治体で成果を上げたサービスを、他の自治体にも提案することで、ビジネスの拡大を図ることができます。自治体間の情報交換は活発に行われているため、優良事例は口コミで広がる可能性もあります。

自治体営業は、一過性の売り上げを追求するのではなく、自治体との長期的なパートナーシップを通じて、持続的な成長を目指し、自治体との信頼関係を礎に、地域に不可欠な存在となることが、自治体ビジネスの究極の目標なのです。

法則7:自治体ビジネスを通じて社会課題解決に貢献する

自治体営業の究極的な目的は、自治体との連携を通じて、地域の課題解決や住民の幸福度向上に貢献することです。自治体ビジネスは、単なる収益の獲得手段ではなく、社会的意義の高い取り組みであるという認識が重要です。自社の強みを活かして、自治体の抱える課題解決に真摯に取り組むことが求められます。

自治体の抱える多様な課題

自治体が抱える課題は、地域によって様々です。少子高齢化や人口減少、地域経済の低迷、インフラの老朽化など、自治体は複雑な課題に直面しています。これらの課題は、一朝一夕には解決できない難題ばかりです。しかし、だからこそ、民間企業の知恵と技術が求められているのです。

自社の専門性を活かした課題解決

自治体ビジネスに取り組む企業は、自社の専門性を活かして、地域課題の解決に挑戦することができます。例えば、ICT企業であれば、デジタル技術を活用して行政サービスの利便性向上や業務効率化に貢献できるでしょう。また、介護福祉分野の企業であれば、高齢者の生活支援や地域包括ケアシステムの構築に寄与することができます。

重要なのは、単に自社の商品・サービスを売るのではなく、地域の課題解決に真摯に取り組む姿勢を示すことです。自治体の抱える課題に向き合い、解決策を共に考える。時には、自社の既存の商品・サービスでは対応できない場合もあるでしょう。そのような時こそ、自社の強みを活かしながら、新たなソリューションを生み出す努力が求められます。

経済的価値と社会的価値の両立

また、自治体ビジネスでは、経済的価値と社会的価値の両立が重要なテーマとなります。自社の利益追求と地域課題解決のバランスを取ることが求められるのです。長期的な視点に立ち、地域に根差したビジネスモデルを構築することが肝要です。

例えば、地域の中小企業や農家と連携し、地域資源を活用した商品開発を行うことで、地域経済の活性化と自社の収益向上を同時に目指すことができます。また、自治体との連携により、社会的課題の解決に取り組むNPOやソーシャルビジネスを支援することで、地域の持続的発展に貢献することもできるでしょう。

自治体との共創関係の構築

自治体ビジネスに取り組む企業は、社会課題解決の担い手として、自治体と共に地域の未来を創造するパートナーとなることが期待されています。地域の課題に真摯に向き合い、自社の強みを活かしたソリューションを提供し続けることで、自治体との信頼関係を築いていくことができます。

また、自治体ビジネスを通じて得られた知見やノウハウを、他の地域にも展開していくことも重要です。ある地域で成功したビジネスモデルを、他の地域の課題解決に応用することで、社会的インパクトを拡大することができます。自治体ビジネスの先駆者として、地域課題解決のロールモデルを提示することも、企業の社会的責任の一つといえるでしょう。

社会的意義の高いビジネスの実現

自治体ビジネスは、企業にとって新たなビジネスチャンスであると同時に、社会貢献の機会でもあります。自社の強みを活かし、自治体との連携を通じて、地域の課題解決に取り組むことが求められています。そのためには、自社の利益追求と社会的価値の創出を両立させる、長期的な視点が不可欠です。

自治体ビジネスに取り組む企業は、単なる販売者ではなく、地域の未来を共に創造するパートナーとして、自治体と向き合うことが重要です。地域の課題に寄り添い、自社の強みを活かしたソリューションを提供し続けることで、自治体との信頼関係を築いていくことができるでしょう。そして、その信頼関係を基盤に、地域の持続的発展に貢献することが、自治体ビジネスの究極的な目標なのです。

おわりに

自治体ビジネスは、企業にとって大きなチャレンジであると同時に、社会的意義の高い取り組みでもあります。自治体特有の意思決定プロセスや、地域ごとに異なる課題など、自治体営業には多くの困難が伴います。しかし、それ以上に、自治体との連携を通じて、地域の課題解決や住民の幸福度向上に貢献できる可能性があるのです。

本記事では、自治体営業の第一線で活躍する専門家の知見をもとに、自治体営業を成功に導く7つの法則を紹介してきました。徹底的なリサーチによるターゲティング、自治体の予算編成やニーズの理解、担当者との信頼関係構築、庁内での横展開の促進、地域企業とのパートナーシップ構築、導入後の運用・サポートの重視、社会課題解決への貢献――。これらの法則は、いずれも自治体営業で成果を上げるために欠かせない要素ばかりです。

もちろん、これらの法則を実践するためには、時間と労力、そして何より覚悟が必要となります。自治体営業の道のりは険しく、すぐに結果が出るとは限りません。しかし、その先に待っているのは、地域の課題解決と、自社の持続的成長という、大きな可能性なのです。

自治体ビジネスは、企業の新たなフロンティアであり、社会貢献の機会でもあります。是非、本記事で紹介した7つの法則を手がかりに、自治体営業にチャレンジしてみてください。地域に根差し、地域とともに成長するビジネスを実現することで、企業としての存在意義を高めることができるはずです。

自治体営業の道は平坦ではありません。しかし、その先には、企業と自治体が手を携えて、地域の未来を創造する光景が広がっています。その理想の実現に向けて、一歩一歩前進していく。それが、自治体ビジネスに取り組む全ての企業に期待されている使命ではないでしょうか。

自治体ビジネスの可能性を信じ、地域の課題解決に全力で取り組む。そのためのヒントが、この7つの法則には凝縮されています。本記事が、自治体営業の指針となり、多くの企業の挑戦を後押しする一助となれば幸いです。地域の未来を拓く、自治体ビジネスの新たな一ページが、今、始まろうとしているのです。

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