SNSを活用したインフルエンサーマーケティングによるシティプロモーション事例が増えている。株式会社イングリウッドは、ふるさと納税支援で培った自治体とのネットワークとインフルエンサーマーケティングのノウハウを組み合わせ、地域の魅力を戦略的に発信する新たなアプローチを提案している。同社の取り組みについて、インフルエンサー事業責任者の山田大氏とプランナーの白根涼氏に話を聞いた。

(左)山田 大、(右)白根 涼
株式会社イングリウッド インフルエンサー事業責任者
山田 大
大手WEB広告代理店にて金融・ファッションEC・旅行・教育と幅広く担当。その後インフルエンサーマーケティング会社の立ち上げに参画し、取締役として事業規模拡大を牽引。2025年1月に株式会社イングリウッドインフルエンサー事業責任者として参画。
株式会社イングリウッド プランナー
白根 涼
大手インフルエンサーマーケティング会社にて、食品・飲料・観光・地方創生など数多くのPR施策を手がける。2024年8月にイングリウッドに入社。
現在はプランナーとして、企業・自治体など広くマーケティング支援に携わる。
ふるさと納税支援からシティプロモーションへ
シティプロモーションでインフルエンサー活用に注力するようになったきっかけは?

弊社ではこれまでふるさと納税の支援を各自治体様に向けてご案内してきました。そうした中で、シティプロモーションに課題を感じていらっしゃる自治体様も多くあることがわかりました。私自身、前職でインフルエンサーマーケティング支援を行ってきた経験があり、その知見やキャスティング力が自治体のシティプロモーションに生かせるのではないかと考えました。

前職では約5年間インフルエンサーマーケティングの会社で取締役として活動し、15,000名ほどのインフルエンサー登録を実現しました。商品の魅力を伝えるだけでなく、PR面での魅力発信のご支援もできるのではないかという想いから、インフルエンサーマーケティングを自治体様に対しても展開していきたいと考えています。
シティプロモーションの4つのKPIとアプローチ
インフルエンサー活用の戦略について教えてください

シティプロモーションは「観光」「地域経済活性化」「シビックプライド」「移住定住」の4つを実現するために地域発信を体系化したものです。目的に合わせて、インフルエンサーの選定やコンテンツ開発・発信媒体を戦略的に使い分け、施策を提案しています。例えば観光促進の場合、体験型プロモーションが効果的です。インフルエンサーが直接その地域を訪れ、グルメやアクティビティなどを体験し、その様子をSNSで発信します。旅行やVlog、グルメ等、特定の発信に長けたクリエイター起用することで、より自然な形で地域の魅力を伝えることができます。
地域経済活性化では、ふるさと納税と連携した特産品の紹介動画の発信も施策の一つです。ゆくゆくはVTuberやアイドルなど、ファンとのエンゲージメントが高いインフルエンサーと共創した限定返礼品開発も視野に入れています。

インフルエンサーを活用する最大の強みは、自治体のニーズに合わせたカスタマイズと、低予算でも狙ったターゲット層に効果的にアプローチできる点です。またセグメント、プラットフォーム、予算の柔軟な調整が可能な点も魅力です。
インフルエンサー施策の効果測定は?

弊社では、アンケート調査を活用した効果測定を提案しています。YouTubeやInstagramのストーリーからアンケートに遷移できるよう設計し、「この自治体を知っていますか?」「行ったことはありますか?」といった質問で視聴者からフィードバックを集めます。

効果測定から次の改善策を考える取り組みは企業のコンサルティングでは当然のことですが、自治体様の中には「やりっぱなし」になってしまうケースもあると聞きます。効果を振り返り、次の改善策を提案し、PDCAサイクルを回すことで、本当の意味での効果創出につなげています。
インフルエンサーの熱量が効果的なPRにつながる
キャスティングにおける御社の強みを教えてください

アプリのプロモーションでは2週間で25万インストールを達成した事例があります。この時に重要なのが、ユーザーが行動するきっかけとなるコンテンツを「一緒に」作ることです。その上で、密接に連携できるインフルエンサーに最初に投稿してもらい、「この案件で成果が出る」という情報をインフルエンサー内に広めます。インフルエンサー同士がつながるコミュニティがあるのですが、そこでの口コミが広がることで、短期間に600名ものインフルエンサーに参加していただくことができました。

各プラットフォームにはそれぞれ特性があります。YouTubeの場合はショート動画の浸透によってリーチできる層が広がっているのですが、既存ファンにも深くリーチができるのが強みです。一方、TikTokは「For You」ページを通じて幅広いユーザーにリーチできるので、新規層の開拓に適しています。こうした知見を活かし、目的に合わせた最適なインフルエンサーとプラットフォームを掛け合わせて施策をご提案しています。
インフルエンサーを活用した取り組みの実績を教えてください

弊社では、ふるさと納税の外部流入施策として、VTuberを活用したライブ配信を実施しました。自治体様のおすすめ返礼品をVTuberが生配信で紹介する企画です。この施策では、ページビューが前日比630%増加するなど大きな成果を上げました。
前職で手がけた観光プロモーション施策では、ターゲットに合わせて複数のインフルエンサーを起用して動画を作成しました。なかでも女性の一人旅テーマした動画はYouTube広告としても活用したことで、「山口県旅行」で検索すると上位に表示されるほどの成果を上げました。

“茶色い食卓”をテーマに返礼品を並べて配信
自治体へのメッセージをお願いします

地域の魅力を発信することは外から来る人を増やすのはもちろん、地元への愛着を育てることにもつながります。だからこそインフルエンサーにとっても、単なる仕事ではなく、PRを通じて心から自治体に興味・関心を持ち、熱量を持って発信してもらうことが重要だと考えています。

インフルエンサーにも大切していることがあるので、自治体様とインフルエンサーの双方にとって最適な取り組みにしていくことが、結果として効果的なプロモーションになると確信しています。まだ知らない地元の魅力を、PRを通してより多くの方に届けていきたいですね。
(取材日:2025年4月11日)