一般社団法人 自治体DX推進協議会

自治体の電力調達・運用に転機を。現状分析から課題解決まで総合支援

世界的な燃料価格高騰による電気料金の値上がりに歯止めがかからない中、多数の施設を抱える自治体はどう動くべきか。日々の業務に追われて向き合えない、従来の手法と異なる対策をとりにくい等の理由から、議論が停滞しているケースも少なくないだろう。

株式会社エネリンクは、電力の調達・運用をトータルサポートするEnergy Service Providerとして、自治体の電力運用を支え続ける─。

 


 

株式会社エネリンク 山本 浩之様

株式会社エネリンク 山本 浩之 プロフィール
  • 大学卒業後、通信業界にて主に代理店ビジネス分野に従事。
  • 電力小売全面自由化を機にグループ内の電力会社に出向し、直販および代理店営業、コールセンターや社内システムの構築など幅広い分野を経験。
  • これまでの知見を活かし新たな価値提供につなげたいと考え、エネリンクに転職。
  • 現在は新サービスの開発や運用改善を主とした企画分野の責任者を担っている。


 


 

 

―御社の概要と設立の経緯をお聞かせください

株式会社エネリンクは、エネルギーの最適調達と最適運用をトータルサポートしている会社です。お客様と電力会社様をつなぐEnergy Service Provider(エネルギーサービスプロバイダー)として電気の調達先の選定や運用方法の分析・課題解決の提案等を行っているほか、SDGs・カーボンニュートラルへの対応も支援しています。

 

かつて弊社の代表は名古屋で自動車の部品を扱う会社を経営していました。その産業にかかるコストの大部分を電気が占めている実態があり、電気を利用する側の立場として、電力会社の切り替えや省エネ商材の取り入れ、使い方等の試行錯誤を重ねていたのです。その中で、実際に経験した苦労をノウハウ化し、「同じようにエネルギーコストでお困りのお客様をサポートできるのではないか」という着想が生まれ、株式会社エネリンクの設立に至っています。

 

現代の世の中では誰もが電気を利用していますが、すべての人々が電気代に対して強い関心を持って動いているわけではありません。しかし、関心をもたないことで生まれる損失があることも確かです。そこで、「電力自由化がどういうものか」「現在の電力業界がどのような状況か」「お客様ごとにどのような対策および選択をすべきか」といった内容をわかりやすく伝えていくことを当社のミッションとしています。

 

 

─主力事業である電気の「調達支援」と「運用支援」について

「調達支援」は電力会社の選択に係る支援、「運用支援」は電気の使い方や省エネ等に係る支援を意味しています。ただ、この2本柱になったのは割と最近のことで、2021年までは「調達支援」がメインでした。特に2016年の全面自由化以降は各電力会社の価格競争が激しく、契約更新のタイミングに合わせて電力会社を切り替えたり、契約中の電力会社に価格交渉を行うことでコスト削減が実現できていたのです。

 

転機となったのは2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争です。世界的に燃料価格が高騰し、発電コストや日本卸電力取引所の価格に多大な影響を及ぼしました。その結果、新電力のみならず中部電力や東京電力などの各地域の大手電力会社でも値上げや新規受付の停止をするほど、電力業界全体が大混乱に陥りました。そうなると当然、電力会社を切り替えたり、価格交渉を行うという手法はなかなか難しくなりますよね。

 

電気代の仕組みは根本的にはとてもシンプルで、基本料金と電力量料金の2つが大層を占めています。基本料金は「契約電力×基本料金単価」、電力量料金は「使用電力量×電力量料金単価」で計算されますので、電気代を安くする方法は「単価を下げる」か「契約電力・使用電力量を抑える」の2択になります。2021年までは「調達支援」の事業の中で単価を下げつづけることができていましたので、私たちの事業も「調達支援」がメインでした。

 

しかし2022年からは、契約先の電力会社が値上げをする、切り替え先の電力会社が見つからない、切り替えられたとしても逆に価格が上がってしまう等、単価を下げるための営みが難しくなりましたので、いよいよ「運用支援」として本格的に「契約電力・使用電力量を抑える」ためのサポートに踏み込もうと判断したのです。もともと「運用支援」のアドバイスはオプション的に行っていましが、今は「調達支援」と並ぶサービスにシフトチェンジしています。

 

 

 

─自治体様との取引が多いと伺いました

2023年6月末時点で、高圧施設のみで全国175自治体様、施設数にして3,491施設の取引実績がございます。産業に限らず自治体様においても、学校や庁舎等あらゆる施設で必ず電気を使用していますので電力契約の件数としては膨大です。しかし正直なところ、多くの自治体様が電気の契約を考える際には、地域の大手電力会社と随意契約を結ぶか入札方式にて事業者選定を行うかの2択になっているのが実態です。

 

しかし、自治体様の電気代は住民からの税金で賄われているわけですし、電気代の削減効果を原資に行政サービスの発展をさせていくためにも、産業と同じレベルで電気代に向き合って欲しいという思いがございました。電気のサービスに着手したきっかけは産業からの派生でしたが、気がつけば今や当社のクライアントの半数は自治体様になっています。

 

株式会社エネリンクの取引実績詳細

 

 

─Energy Service Providerという部分について、詳しく教えてください

Energy Service Providerとは、インターネットサービスプロバイダー等に倣い、私たちが目指すところの「お客様と電力会社様を繋ぐ存在」という意味を込めた言葉です。お客様が直接電力会社と交渉したり、契約更新時期に合わせて複数の電力会社から見積を取得したりするのは相当な労力がかかりますので、第三者的な立ち位置で私たちが間に入らせていただきます。

 

特に自治体様の場合は“公平性”を重視されますから、そこは私たちも強く意識して、第三者目線で公平に電力を選ぶようにしています。

 

また、各電力会社様の販売実績や企業の信用情報、環境配慮への方針など様々な観点から調査を行い、お客様に安心してご契約いただける電力会社様の中からご提案をさせていただいております。

 

自治体様が求める“公平性”をきちんと担保したいですし、電力供給が途中でストップしてご迷惑をかけるような事態は避けなければなりません。そのようなことが起きないためにも、信頼できる電力会社を紹介することはもちろん、私たちが上手く間に入って、お客様と電力会社の双方にとってスムーズな取引を実現したいと考えているのです。これは、私たちがESP方式として掲げる「経済性」「安全性」「課題解決」のうち「安全性」の部分に該当します。

 

ESP方式で重視している3つの観点

 

 

─「経済性」についてもお聞かせいただけますか

「経済性」に関しては、当社にサービス料を支払うことでトータルコストが上がったり、当社が間に入ったのに電力会社が提示する価格が変わらなかったりしても意味がありません。

 

当社が間に入ることで電力会社様からの提示価格が下がる理由で最も分かりやすいのがボリュームディスカウントです。現在ご契約いただいているお客様は施設数で約1万件。その中には自治体様をはじめとした大規模な案件も多数あるので、先々の案件獲得・波及効果のためにも、各電力会社様から一歩踏み込んだ価格を提示していただけるのです。

 

また、当社ではお取引先の電力会社様ごとに担当を付けて密にやり取りをしていますので、「今年は電源に余力がある」「電気の使い方がこういうパターンのお客様なら価格を下げられる」等の情報が定期的に取得しています。お客様がご自身で数十社の電力会社に問い合わせをするのは大変ですし、電力会社側も一利用者に対してはそこまで詳細な情報を開示することないでしょう。一方で私たちはタイムリーな情報を得ながら、競争力のある価格が出せそうな電力会社様にピンポイントでお願いできるので、経済性の担保が実現しています。

 

電気の価格は使う時期やタイミングによっても変動するものであり、いつでも誰にでも安くできる電力会社というのは存在しませんので、私たちがアンテナを張って調整しながらご提案しているようなイメージですね。

 

 

─「課題解決」についての見解はいかがでしょうか

当社の営業は少し泥臭い部分があり、できるだけ客先に足しげく通うなど、昔ながらの営業スピリッツのようなものを大切にしています。コミュニケーションが浅いと、お客様が抱えている本当のニーズに辿り着くことは難しく、とにかく電気代を安くすることが一番の目的になってしまいがちです。しかし、サービス料金を月額でいただいているからには、常日頃から手厚くサポートさせていただきたいと考えています。

 

電力会社の切り替え自体は長期契約でない限り1年に一度のことですが、切り替えた後の効果実績のフィードバックや、使い方の分析・アドバイス等を定期的に実施しているほか、当初見込んでいた効果が得られていない場合には原因と解決方法を探っていきます。たとえば生産工数が増えれば電気代が上がるのは仕方のないことですから、LED導入によるコストカットを提案するなど、案件ごとに対応していますね。

 

このように密な関わりを持っているからこそ、お客様の本当のニーズを引き出して課題解決に導くことが可能なのです。長くご契約いただいているお客様は過去の電気代の推移も把握していますから、自然とニーズをキャッチして適切なご提案ができるようになります。現状分析に基づいて改善提案を行い、効果測定とフィードバックを繰り返しながら、次年度の予算策定の部分まで支援させていただいております。

 

 

 

タスクは極力少なく、電気代と向き合えるように

―類似サービスの有無と、御社ならではの強みは

広義で競合になり得るのは、電気料金の比較サイトを運営している企業様なのではないかと思います。複数の電力会社から提案を比較できるという点で、私たちのサービスと類似しているでしょう。ただ、どうしても比較サイトではデジタルの要素が強くなり、お見積もりに必要な情報をお客様自身が用意したり、データの入力に骨を折ったりする必要性が出てきます。

 

一方で私たちは根本的に、法人様や自治体様が「電気について考えなければならない時間」自体を削減したいというコンセプトで動いていますので、お客様のタスクは電気代の請求書12ヶ月分をご用意いただくだけです。それ以降のデータの落とし込み、見積もり依頼、電気料金の交渉等は、極力すべてEnergy Service Providerである私たちが実施するというスタンスで間に入っております。

 

比較サイトは有益なツールだと思いますが、電気まわりのことを担当される方々はインターネットやICTに長けた人ばかりではありません。私たちはどんな担当者様に対しても有利不利なくサービスをご利用いただけるよう、敢えてアナログな受付方法やコミュニケーションを残していますので、比較サイトと当社のサービスは似て非なるものという認識です。現状把握や分析にはデジタルも活用しておりますが、お客様対応の部分では個別かつ直接的なやり取りを大切にしていますね。

 

 

―これまで自治体様との取引で得られたフィードバックやご要望は

昔から注力している「調達支援」の分野では新たなご要望というのは特にありませんが、「運用支援」については出てきています。たとえばLEDへの切り替えに関して、私たちが工事をするわけではないので、電力の比較検討と同じように複数の業者さんをあたって見積もりを出し、そこから工事の発注に進むことになります。そうなると入札が絡んでくるため、自治体様としては工事費用も我々のサービス料に含めることができれば、庁内決裁がスムーズになると感じられているようですね。エネリンク運営の入札方式を求める声があったりもします。

 

さまざまなご意見・ご要望を伺ったうえで新たな展開を考えていけたらと思っていますが、ひとつだけご要望に沿えないことがございます。自治体様や民間の法人様に対して他の新電力からご提案があった際に、当社の取扱いに含めて欲しいというご要望をいただくことがあるのですが、こちらはお断りさせていただくことが多いです。それは、安全性を担保するためにも、我々が信頼している電力会社様とだけお取引させていただくというスタンスは今後も変えていきたくないからです。

 

 

―御社および電力業界全体の今後の展開について

全面自由化以降、激化した競争環境の中で発生した世界的な燃調価格の高騰、そして未だ発電の原料を海外に依存している状況、この2点を踏まえると、各社リスクヘッジの部分を重視して考える必要があるため、電気料金は差が生じにくくなっていくのではないかと見ています。そうなると次はサービス競争が待っていることが明白で、私たちの培ってきたスキームが活きてくると思っています。

 

2022年の価格高騰以降、日本卸電力取引所の価格に応じて請求される市場連動メニューなど、電気料金のメニューが多様化しており、お客様ご自身で比較検討を行うことが困難な状況になりつつあります。サービス競争へ移行したら、各電力会社のサービス内容と価格はより多様化し複数社のサービスを正確に把握することは、実質的に不可能になると言わざるを得ないでしょう。そうなったときに皆様が不利益を被ることがないよう、お客様に適した電力会社のメニューを私たちが目利きしてご提案していきたいと考えています。

 

 

―最後に、自治体様へのメッセージをお願いします

ご依頼いただく規模感はさまざまで、自治体管理の全施設で100件弱にのぼることもあれば、人口の少ない自治体様では10件以下というケースもあります。また、ひとつの自治体様の中でも施設ごとに担当課が異なり、一部の施設のみ請け負うことも多いです。施設数にかかわらずお気軽にご相談いただければと思いますし、一部でご利用の自治体様に関しては全庁的な取組に繋がるように貢献していきたいですね。

 

今の時代は何事もデータ化が進んでおり、電力も例外ではありません。しかし、自力でデータを管理したり電気の使い方を分析したりするのは、容易なことではないでしょう。電力会社の切り替えはもちろん、今どれくらいの電気を使っているのかという現状把握も含めて、「電気について考える第一歩」を、ご一緒に進めていけたらと思います。

 

その他参考資料 (電力データを活用した分析イメージ)

 


 

株式会社エネリンクへの問い合わせはこちら

 

株式会社エネリンク 企業概要

2010年7月1日設立。主な事業内容はエネルギーの調達支援及び運用支援を行うESP(エネルギーサービスプロバイダー)事業、環境及び省エネルギー機器の販売も実施。

自治体・官公庁との取引実績は全国175自治体3,491施設。取引中の電力会社は21社。

国際的な課題であるカーボンニュートラルに向けての支援も提供。

2021年度CO2削減量への貢献2,905t-CO2(約842万円の削減効果※英国の炭素税基準)。

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