現場職員が主役の内製化で実現する
小さな一歩から始める持続可能な自治体DX
人材不足と業務の属人化に悩む自治体にとって、DXは避けて通れない課題。だが、大規模な投資や専門知識がなくても着手できる方法はある。Claris社が提供する40年の歴史を持つローコード開発プラットフォームにより、現場職員自らがシステムを構築し、業務改善を実現する自治体が増えている。同社で自治体担当を務める古谷氏に、内製化による自治体DXの可能性について話を聞いた。

Claris International Inc.
自治体担当 古谷 豪
2015年にファイルメーカー株式会社(現Claris)入社。SEチームに所属し、外部イベントでの講師を務めながら、Claris FileMakerをはじめ、Claris 製品の魅力を伝える活動に従事。現在は自治体向けソリューションの担当として、全国の自治体のDX推進を支援している
現場の声を形にする開発プラットフォーム
Claris FileMakerの特徴をお聞かせください。
Claris FileMakerは、現場の職員が業務知識を生かして自らアプリを構築できる、ローコード開発ツールです。情報システム部門の人数が限られる多くの自治体様では、あらゆる業務が長年スプレッドシートで運用されてきた結果、属人化が進み業務の継承に課題を抱えています。同システムでは、マウス操作で直感的にデータベースアプリを作ることができ、日本語のパーツを組み合わせるだけで、ボタンクリック時の自動化処理なども構築できます。プログラミング経験がない方でも、フローをイメージしながら自動化処理を実装できるのが大きな特徴で、短期構築・小規模スタート可能、効果検証から全庁展開まで無理なく移行できます。
他のローコードツールとの違いは何でしょうか。
4つの強みがあります。第一に、ノーコードからローコード、JavaScript連携などのプロコードまで、幅広い開発が可能な点です。第二に、印刷やPDF出力などの機能が標準装備されており、有料プラグインが不要な点。第三に、1985年から40年間の実績とAppleグループとしての信頼性。そして第四に、オンプレミス版の提供により、LGWANやマイナンバー利用事務系ネットワークでの利用実績が豊富な点です。クラウドサービスが使えない環境でも業務改善に取り組めることが、多くの自治体様にとって導入の決め手となっています。

広島市が実証した成功事例。小さな改善が組織変革へ
実際の導入事例について教えてください。
広島県広島市様の事例が印象的です。最初は生活保護の査察指導業務に利用する台帳をシステム化されました。従来は各区がExcelファイルで管理しており、担当者ごとにフォーマットも異なっていたため、集計作業や異動時の引き継ぎが困難だったのです。FileMakerで開発したアプリでは、基幹システムである福祉情報システムから毎日データを取り込み、日々の進捗状況を更新・参照できるようになりました。管理フォーマットが統一され、職員の経験差による業務のばらつきも解消。職員ごとにアクセス制限を設定することで、セキュリティも確保されています。
その後の展開はいかがでしたか。
児童扶養手当の管理など、他の業務にもFileMakerによるアプリ化が広がっています。現場のニーズに合わせて柔軟に作れるうえ、アプリの数に応じて課金される仕組みではないので、アプリを作れば作るほど費用対効果が高まります。職員が自分たちで少しずつ改良していけるので、システムの外注よりも低コストかつスピードも上がり、結果として自治体全体のDXが加速しているのです。
手厚い支援体制×低コストで自治体サービスが始動
内製化を成功させるポイントは何でしょうか。
内製化は単にコスト削減のためではなく、自分たちの業務を自分たちで改善できる力を持つことに意義があります。成功のポイントは、小さな課題から取り組むこと。いきなり大規模なシステムを作ろうとすると、スキルの面でも時間の面でも負担が大きく、失敗するリスクも高まります。まずは紙の台帳をデジタル化してみる、Excelで毎日更新しているファイルを自動化できないか試してみるなど、身近なテーマから始めることで、短期間で効果を実感でき、成功体験を積むことができます。

自治体の「内製化」を支援する無料体験セミナーの様子
支援体制と導入費用について教えてください。
自治体庁舎内にお伺いして、無料の体験セミナーを提供しています。3時間程度で実際にアプリを開発する体験をしていただきます。茨城県つくば市様では60名もの職員の方が参加を希望され、3回に分けて開催しました。動画コンテンツやテキストなどの学習教材、全国のユーザーが質問に回答してくれるコミュニティサイト、そして日本全国170社のパートナー企業によるサポート体制も整っています。
導入費用は月額換算で1ユーザーあたり1,850円、100人規模なら1,270円まで下がります。買い切りの永続ライセンスも選択可能で、年度予算に縛られる自治体様にも対応しています。大規模な投資は必要なく、小さく始められることが強みです。
自治体へのメッセージをお願いします。
DXと聞くと大規模なシステム刷新を思い浮かべがちですが、実際には日々の業務の中で小さいけれど解決できれば大きな効果を生む課題がたくさんあります。現場をよく知っている職員の皆様が、その知識をデジタルに落とし込むことで、住民サービスの質を高め、働きやすい環境を作ることができます。我々も学習支援やコミュニティ、パートナーとの連携を通じて、皆様の挑戦をしっかりと支えてまいります。まずは1つの業務から内製化に挑戦してみてください。その小さな一歩が、必ず大きなDXへの道筋となるはずです。
(取材日:2025年9月26日)





