人口減少や関係人口の創出、住民参画の活性化——多くの自治体が抱える課題に対し、従来のオンライン手法では限界を感じる担当者は少なくありません。
株式会社m-Labはブラウザから軽快にアクセスできるメタバースイベントサービス「V-expo」を展開し、婚活・移住促進・交流など、幅広いテーマで自治体との連携事例を積み重ねています。

株式会社m-Lab
メタバースアドバイザー 町山 桃子
通信会社に約10年勤務後、大手広告代理店で営業アシスタントを経て、2023年6月にm-Labへ入社。現在は自治体向けに、メタバースを活用したソリューションの提案・営業に従事している。
自治体の課題に応える、メタバースという新しい選択肢
貴社の事業と、自治体との取り組みを始められた背景は?
弊社は2017年設立で、当初はシステム開発や受託開発が事業の中心でした。転機になったのはコロナ禍です。「オンラインでもリアルに近い体験を作れないか」という課題意識から、メタバース開発に着手しました。
2021年に自社開発エンジン「AREAL」を基盤とするメタバースイベントサービス「V-expo」の提供を開始し、現在では弊社の主軸事業となっています。ブラウザから軽快にアクセスでき、最大1,000人規模の同時参加にも対応できる—。他のメタバースサービスで動作が重く断念した環境でも快適に動く、というのが「AREAL」の強みです。
自治体様への展開については、人口減少や関係人口の創出、地域の魅力発信といった課題に対し、従来のZoomやYouTubeライブのような一方通行型オンライン手法だけでは限界があるのでは、と感じていたことが背景にあります。
福井県越前市様をはじめ自治体の皆様とお話しする中で、「メタバースなら体験として記憶に残り、参加者の興味関心をより高められる」と実感したのが、本格的に自治体様との取り組みを深めていく出発点でした。
自治体様との具体的な連携事例を教えてください
特に反響が大きいのは「婚活」分野でのご活用です。
山形県庄内町様でのメタバース婚活イベントを皮切りに、大分県豊後大野市様、鹿児島県志布志市様と展開し、志布志市様では少人数開催ながらマッチング率50%を達成しました。この数字はリアル婚活パーティーでもなかなか出ない水準です。理由は明快で、アバター越しだからこそ容姿や初対面の緊張に左右されず、価値観や会話そのものに集中できるんですね。
「リアルの婚活には一歩踏み出せない」という方でも、自宅からリラックスして参加でき、2〜3時間の濃密な対話が自然に生まれます。

長崎県雲仙市のメタバース婚活イベントでは、株式会社日本旅行ほか協力企業との連携により、新たな出会いの場づくりが行われた
婚活以外にも活用領域は広がっています。地域の関係人口創出や移住促進といったテーマについても検討しており、都市部在住の方と地域の担い手をメタバース空間でつなぐことで、新たな交流の可能性があると考えています。

越前市の移住促進イベントにて。参加者と職員で記念撮影のシーン
特定非営利活動法人DV対策センター様との取り組みでは、不登校のお子様の学習・居場所支援としてメタバース空間を提供。さらに、自治体領域においても、パートナー企業を通じた取り組みとして、「孤独・孤立対策」といったテーマでのフォーラム活用など、公共分野での活用可能性が広がりつつあります。
リアルでは人を集めにくい、あるいは顔を出しにくいテーマでも、メタバースの「匿名性と没入感」が、これまで届かなかった層に届けるチャンネルになっているのを実感しています。

特定非営利活動法人DV対策センターとの取り組みでは、子どもたちの居場所支援として、季節イベントを取り入れたメタバース交流企画なども実施
事例から見える、メタバースが届ける価値と今後
メタバースが自治体様にもたらす価値とは?
単に「集まる場所」を提供するのではなく、参加者の「次の行動につながる体験」を作ることが最も重要だと考えています。メタバースでの自然な交流が、結果的に実際の来訪や移住相談、コミュニティへの参加といった具体的な行動につながっていく—それこそが私たちが自治体様にお届けできる一番の価値だと思っています。
そのために弊社がこだわっているのが「技術的ストレスの少なさ」です。「V-expo」は自社開発エンジンを採用しており、専用アプリ不要でブラウザから軽快にアクセスできる軽量設計。参加者は操作に手こずることなく純粋なコミュニケーションに集中できます。「メタバースは重くて難しい」という固定概念を持たれている担当者様ほど、実際にデモを体験いただくと「こんなに簡単なんだ!」と驚かれます。この手軽さこそが、住民参画を広げる最大の鍵になっています。

豊富なテンプレートから会場を選択。イベント規模や用途に応じて柔軟に利用できる
GDX(自治体DX推進協議会)との連携の所感は?
新規で自治体様にアプローチする際、民間企業の単独の売り込みでは、どうしても最初は構えられてしまいがちです。そんな中、GDX様が間に入って「こんなメタバースがあるよ」と第三者視点でご紹介くださることで、自治体様にも関心を持っていただきやすく、大変ありがたく感じています。GDX様主催の展示会やウェビナーへの登壇機会も、自治体担当者様と直接対話できる貴重な機会です。メタバースという新しい領域だからこそ、信頼ある業界団体を介した橋渡しは、事業者側にも自治体側にも安心感をもたらすと感じています。
今後の展望と、自治体担当者様へのメッセージをお願いします
今後はメタバースを主軸に据えつつ、高精細な「3Dスキャン」や「AI」を組み合わせた複合的なご提案を強化していきたいと考えています。たとえば株式会社BSNアイネット様との取り組みでは、メタバース空間に「AI要約機能」を実装し、教育現場でのグループワーク支援として実証を進めています。自治体業務の属人化や人員不足という深刻な課題に対しても、AIが補完できる領域はまだ多く眠っているはずです。
「メタバースは難しそう」「うちでは使えないかも」という先入観をお持ちの担当者様こそ、一度デモに触れていただきたいというのが私たちの想いです。アバター越しの気軽な交流が、実際の移住・マッチング・コミュニティ形成といった次の行動を生み出す—その過程にぜひ並走させてください。メタバースをもっと身近で親しみやすいものにして、地域の新しい縁を紡ぐお手伝いをすることが、m-Labの使命だと考えています。
(取材日:2026年4月1日)





