新NISA制度の拡充を背景に個人株主数が過去最多を更新する中、株式会社ウィルズは2025年8月、登録株主65万人強を擁する「プレミアム優待倶楽部」にふるさと納税機能を新設した。
株主優待ポイントを独自通貨「WILLsCoin」に交換し、そのまま寄附に充当できるという業界初の仕組みだ。
大手ポータルの寡占が進むふるさと納税市場において、「投資家」という明確なペルソナを持つ新たな寄附チャネルはどのような可能性を秘めているのか。同社執行役員の石倉健氏、PYCチームの広瀬佳樹子氏に聞いた。
株式会社ウィルズ 執行役員
石倉 健

キャノンマーケティングジャパンにて、新規事業の立ち上げ・事業化を約25年間にわたり牽引。その後、サイバネットシステムでマーケティング責任者を経て、ウィルズへ参画。現在は、ふるさと納税を含むプレミアム優待倶楽部、IR-na
株式会社ウィルズ PYCチーム
ふるさと納税担当リーダー 広瀬 佳樹子

プレミアム優待倶楽部ふるさと納税事業の実務を担う。自治体開拓から運用まで、サービスの最前線を担当。現場で培った経験を活かし、自治体や関係各所と伴走しながら事業を推進。
株主優待の使い道を広げたい─ふるさと納税参入の背景
大手ポータルが寡占するふるさと納税市場に参入された背景は?
石倉 当社は個人投資家という明確なペルソナを持つクライアントを、クローズドサイトで管理しているという独自のポジションにあります。
新NISAの追い風もあり個人投資家が増え、企業側も個人株主との関係構築を強化する動きが出てきている。
そうした中で、株主優待の体験をもっと有意義なものにしたいというニーズを捉え、優待ポイントの消費の選択肢の一つとしてふるさと納税を取り入れました。
一方、ふるさと納税市場では大手ポータルの寡占が進み、寄附が一部自治体に集中する傾向があります。既存のポータルの延長線上には画期的な変化は生まれにくい。ならば、これまで自治体が出会えていない「投資家層」という新規寄附者との接点を作ろう─それが参入の原点です。
株主優待ポイントからふるさと納税への寄附フローについて教えてください。
広瀬 「企業が株主に付与する優待ポイント → WILLsCoinに交換→ ふるさと納税に寄附」というシンプルな流れです。複数企業の優待ポイントを合算して利用できる点が大きな特徴です。
通常、株主優待ポイントはA社でもらったらA社でしか使えません。しかしWILLsCoinに交換すれば合算できますので、より高額な寄附にも充てられます。
現在ポータル会員の総保有コインは約9億円相当で、これがそのまま寄附原資になり得るというのが当サービスのポテンシャルです。クレジットカード決済にも対応しているので、株主以外の方でもご利用いただけます。

「投資家」という新たな寄附者層─既存ポータルにはない価値
自治体にとっての最大のメリットはどこにありますか。
広瀬 これまでのふるさと納税サイトはすべてオープンサイトで、誰でも登録できる一方、ユーザーの属性にこだわりがありませんでした。
当社は個人株主という一定の属性を持った方々のクローズドサイトです。利用者の約88%が個人株主で、寄附の82%以上がWILLsCoin経由で行われています。
世帯年収1,000万円以上の会員が約22%と、全国平均の約3.5倍の割合を占めるなど、従来のポータルでは接点を持ちにくい富裕層の投資家に直接リーチできる点が、自治体にとって大きなメリットです。
石倉 補足すると、投資家というのは基本的に資金管理意識の高い方々なので、税金対策もきちんとやる。そうした属性を持ったユーザーをターゲットにできるというのは、自治体にとって非常に珍しい価値だと思います。
また、リピート寄附にもつながりやすい。株主優待ポイントは毎年付与されますので、WILLsCoinを何度も使って同じ自治体に繰り返し寄附されることが期待されます。
2025年10月のポイント付与規制の影響はいかがですか。
石倉 ポイント還元を軸にした集客施策はもう通用しなくなりますので、ポータル間の差別化は縮小しています。
しかし当社の仕組みは、企業が株主に付与する優待ポイントを活用するモデルであり、ポータルが独自にポイントを付与する構造とは根本的に異なるため、規制の影響を受けません。
むしろ、株主優待ポイントとWILLsCoinを活かした「実質持ち出しゼロ」のふるさと納税が、より選ばれやすい環境になったと感じています。
企業・投資家・自治体の「三方良し」─新しい地方創生モデルへ
今後のビジョンと、自治体へのメッセージを。
石倉 当社は2030年に売上100億円という目標を掲げていますが、これは単なる規模拡大ではありません。企業・投資家・自治体の三者が一体となって地域に資金と応援が循環する状態─ 新しい地方創生モデルの実現を意味しています。
当社は700社以上の上場企業様と接点を持っていますので、自治体とゆかりのある企業の商品を返礼品に加えるといった連携も可能です。個人版ふるさと納税と企業版ふるさと納税の両面から支援を広げていきたいと考えています。
これまでのふるさと納税はポイント合戦によって、「自治体を応援する」という本質的な部分が薄れ
てしまっているのではないでしょうか。自治体のご担当者さまには、既存ポータルの特性を理解した上で、そこでは接点を持ちにくい層にリーチできる新たなチャネルとして、ぜひ当社サービスをご活用いただきたい。
川上には企業の株主優待市場があり、導入企業が増えるほどユーザー基盤も大きくなります。個人版ふるさと納税と企業版ふるさと納税の両面から地域に資金と応援が循環する仕組みづくりに貢献してまいります。
(取材日:2026年3月23日)





