ふるさと納税のポイント付与ルール見直しが迫る中、全国の自治体は「お得感」による価格競争から脱却し、独自のブランディングやリピーター獲得へのシフトを迫られている。
LINE 公式アカウントを活用した自治体向けソリューション「スマート公共ラボ」を展開し、全国180以上の自治体に導入実績を持つプレイネクストラボ株式会社では、ふるさと納税の「特設サイト」構築とLINEを組み合わせた新たな支援事業に乗り出した。
マーケティングの専門家である同事業部の鈴木勝執行役員に、「選ばれる自治体」になるための戦略を聞いた。

プレイネクストラボ株式会社 執行役員
GovTech事業部 事業部長 鈴木 勝
大手ゼネコン、AOLジャパンを経て2004年にヤフー株式会社に入社。コンシューマー事業統括本部 マーケティング部 部長、新規事業開発本部 本部長、ヤフーカード(現PayPayカード)のCMOマーケティング本部長などを歴任し、IT業界で20年以上にわたり新規事業開発とマーケティングに携わる。2021年にプレイネクストラボのアドバイザーに就任後、現職。マーケティングの知見を活かし、ふるさと納税特設サイト構築とLINEを組み合わせた自治体向けファンづくり支援事業を推進。
LINE事業から見えた「もったいない」
ふるさと納税の支援事業に取り組まれたきっかけは。
LINE公式アカウントの導入支援をしている中で、多くの自治体がリッチメニューに「ふるさと納税」のボタンを設置されているのですが、タップした先がテキストだけの案内ページだったり、ポータルサイトへ直接リンクするだけだったりする。せっかくの接点がもったいない状態でした。
加えて、ポイント付与ルールの変更で還元率競争だけでは勝てない時代が来ることは明らかです。
生産者の想いを届けてファンになってもらう仕組みが必要だと考えました。
当社にはLINEと自治体接点の知見があり、再委託先のフラクタル社にはSEO・サイト構築のノウハウがある。うまく役割分担できると確信し、事業を立ち上げました。
自治体のふるさと納税担当者の課題とは?
正直に言えば、ポイント還元率競争の方が担当者にとっては楽なんです。ゲームのルールが分かりやすいですから。でも制度が変わった以上、「コスパ型で負けたからしょうがない」という言い訳は通用しなくなる。
逆に言えば、ストーリーの力で勝負できるチャンスが生まれたということです。
自治体の担当者は3年で異動してしまうことが多く、ノウハウが蓄積されにくい。だからこそ、ツールだけでなくマーケティングの考え方が必要だと思ったのです。
特設サイトは「物語を語る場」
ポータルサイトがある中で、なぜ「特設サイト」が必要なのですか。
ポータルサイトは本質的に「比較サイト」です。価格や量で勝てない自治体が、不利な土俵で戦わざるを得ない状態になっていると言えます。
特設サイトはそこから外れるための「物語を語る場」です。
生産者のストーリーや地域の特性を丁寧に伝え、共感によって選んでもらう。比較ではなく意思で決
定してもらうための装置なのです。
ふるさと納税額ランキングTOP50の自治体を調べたところ、特設サイトを構築しているのは28団体(56%)でした。圧倒的なコストパフォーマンスで勝負できる一部の自治体は別として、多くの自治体にとっては、ストーリーで「選ばれる理由」を作ることが不可欠です。
特設サイトの構築で重視されているポイントは。
普通のサイトは「待ち構えているだけ」の接客装置です。飛び道具がなければ人が来ません。
しかしSEO対策がしっかりできていれば、サイト自体が「集客マシン」になる。
実際、ふるさと納税の特設サイトでは、ダイレクト流入(カタログ・DM・LINE経由)とオーガニック検索で集客の約80%を占めています。
当社では再委託先のフラクタル社と連携し、Googleのサイトパフォーマンス最適化とSEOキーワード選定を徹底しています。
イベントからLINE、そして移住定住へ
リアルイベントとデジタルをどのように連動させるのですか。
ふるさと納税のイベント出展をAIDMAのフレームで考えています。
まずインパクトのある展示や試食で足を止め(Attention)、体験してもらう(Interest)。ここまではアナログの世界です。重要なのは次のDesireの段階で、価格競争に入らず、生産者ストーリーや旬の情報で「自分ごと化」してもらうこと。そしてMemoryの段階でLINE登録やQRコードから特設サイトに誘導し接点を保持する。最後のActionでは、比較ではなく共感で選んでもらう。
このアナログからデジタルへの「つなぎ」が多くの自治体でうまくいっていないのです。
ふるさと納税から移住定住への接続という発想はどこから。
どの自治体も「人口減少の中で移住定住を増やしたい」とおっしゃいますが、ふるさと納税と移住定住の部署が縦割りで連携できていないケースがほとんどです。
しかし、ふるさと納税の寄附者は「その自治体に好意を持ち、返礼品を通じて地域の魅力を体験した人」─ 言い換えれば移住定住の見込み客です。
LINEはここで強力なハブになります。リッチメニューに観光情報を掲載すると県外登録者が平均8.3%から17.4%に増えるというデータがあります。住民サービスのツールであると同時に、関係人口を育てるプラットフォームにもなる。
ふるさと納税の特設サイトで共感を生み、LINEで接点を保ち続ける中で、子育て支援や地域イベントの情報が自然と目に入り、「この地域で暮らせるかも」という気持ちが育っていく。「売る」から「関係づくり」へ─それが本質的な戦略です。

短期のKPIだけでなく、長期の視点を
運用面でのサポート体制と、自治体へのメッセージを。
当社ではサイト制作から運用まで一貫してお引き受けしており、月1件の記事・返礼品追加を含む運用サポートを提供しています。
ストーリーの制作ではライティングの質が重要なので、生産者へのインタビュー企画もオプションで対応可能です。
自治体側には写真と記事ネタをご提供いただければ、あとは当社側で仕上げます。
今回のポイント付与ルール変更は、ふるさと納税が本来あるべき姿に戻るということでもあります。自分の地域をどう応援してもらうか─ その原点に立ち返る機会です。
寄附額というKPIだけでなく、ふるさと納税をきっかけに関係人口を育て、移住定住にまで繋げていくという長期的な視点でぜひ考えていただきたい。
私たちは商材だけでなく、マーケティングのノウハウごとお伝えし、伴走していきます。
制度が変わった今こそ、新しいチャレンジをしていただきたいと思います。
(取材日:2026年3月26日)





