まちの掲示板

事業者インタビュー

『お店のファン』を『マチのファン』へ
店舗型ふるさと納税®『ふるさとズ』が描く、矢印が逆の地域循環モデル

ポータルサイトを経由したふるさと納税が定着し、全国的な「返礼品競争」が激化する中、株式会社サンカクキカクが展開する店舗型ふるさと納税®『ふるさとズ』は、その構造をまるごと反転させる。「お店のファンを、マチのファンにする」中間管理から脱却し、地域で頑張る事業者を主役に据えた画期的な仕組みだ。ビジネスモデル特許を取得し、全国360店舗以上に広がるこのサービスについて、同社代表取締役の宇佐川桂吾氏に聞いた。

 

 

株式会社サンカクキカク 代表取締役 宇佐川 桂吾

福岡県久留米市出身。千葉大学大学院修了後、2012年に久留米市でデザイン企画事務所「サンカクキカク」を創業。「デザインと企画の力」で地域の強みを引き出すことをミッションに、地域DX 支援や街づくり事業を展開。2021年にふるさと納税事業『ふるさとズ』を立ち上げる。


 

ゴルフ場での「二週間問題」から生まれた、矢印が逆のふるさと納税

 

『ふるさとズ』誕生の背景を教えてください。

もともと当社は中小企業のデザイン制作や商工会との街づくり、お祭りの企画などを手がけていました。地元の飲食店や企業さんから「ふるさと納税に関わりたいけど、自分のところには送れる商品がない」という声をよく聞いていたんです。そうした中で中間事業者としてふるさと納税に関わり始め、自治体の方から「現地で完結できたら早いのに」という声もいただきました。

当時、ゴルフ場での利用を最初に始めたのですが、従来の仕組みだと紙のクーポン券を郵送するため、寄附してから届くまでに二週間かかっていた。目の前でゴルフをしているのに、その場で使えない。一般的なネットショップでは翌日届く時代に、ふるさと納税だけがこのタイムラグを抱えていたんです。コロナ禍の最中でも、「収束すれば地域を訪れたいという需要は必ず戻る」という確信がありましたので、ならばその場で完結するシステムを作ろうそこが原点でした。

最初は物流コストや事務手続きの削減が動機だったのですが、やっていく中で気づきがありました。ゴルフ場に行っても、そこがどの自治体にあるかなんて普段は気にしない。でも、この仕組みを通じてふるさと納税をすると、自然と「このゴルフ場はこの自治体なんだな」「周りにこんな場所があるんだな」と地域への愛着が生まれていく。最初からファンづくりを意図していたわけではなく、手間とコストの課題解決から始めて、たどり着いた姿が今の「お店のファンを、マチのファンにする」という考え方なのです。

 

「現地決済型」とも呼ばれますが、本質は違うそうですね。

「現地決済型」の仕組み自体がなかった時代に僕らが始めたサービスなので、そう紹介されることも多いのですが、現地にこだわりすぎるとその良さは限定され過ぎてしまいます。他サービスの多くは「現地に来なければ寄附できない」という設計になっていますが、それだと寄附者との接点を狭めてしまうのではないかと感じています。本当は来れなくても応援していいし、支援していい。私たちが重視しているのは、リアルの「店舗の軒先」を起点に置くという考え方です。

店舗ごとにふるさと納税の特設ページを用意し、寄附のやり取りはすべてその店舗のチャネルで行われる。つまり、その店舗自体が「自治体の顔」になるのです。

たとえば車で三時間かかるお店に毎週は行けませんよね。でも、家からスマホで決済を済ませておけば、次に行ったときは使うだけ。SNSやHPのリンクから飛んできて寄附して、後日訪れて体験する。そういう「寄附者がやりたいと思ったタイミング」に応援できる設計にしています。

この仕組みはビジネスモデル特許として取得しており、他社が真似できない唯一無二の設計です。最近ではオンラインクーポン機能を導入し、自社ECサイトやSNSと連動させることで、ファンの熱量をダイレクトに寄附へ繋げる設計を強化しました。事業者が日頃から育んできた発信力そのものが地域の財産となり、日常のコミュニケーションの延長線上で自然にふるさと納税が行えるこの仕組みは、事業者と自治体の双方から高く評価されています。

 

事業者のファンが直営店・イベント・オンラインストアなどから寄附でき、地域貢献へとつながる循環を生み出す

 

「ノイズ」を削ぎ落とした寄附体験とコンパクトな自治体運営

 

『ふるさとズ』のサービス設計で、最もこだわった点は何ですか。

私たちのシステムにおける最大のこだわりは、あえてレコメンド(おすすめ)や他との比較検討をさせないことにあります。一般的なポータルサイトでは、トップページから地域や商品を選んでいく「ショッピング」の動きが前提ですよね。でも僕らは、その動線を逆から設計しています。

入口はあくまで「お店」です。お気に入りのお店のふるさと納税特設ページに来たら、そこにはそのお店の商品だけが並んでいる。「うなぎを一人前食べるか、二人前頼むか」そのシンプルな選択だけでいい。

「このお店を応援したい」「このサービスを受けたい」という純粋な気持ちに対して、他のおすすめを表示することはファンにとっては「ノイズ」でしかありません。

応援したい気持ちにまっすぐ寄り添って、迷わせることなく寄附へ導く。これが僕の考えるノイズレスなデザインです。比較検討して地域を「選ぶ」というのは、結局は横のマチとの取り合いでしかない。僕らは「増えると豊かになる」仕組みを目指しています。

 

モール型では比較検討が避けられないが、店舗型では寄附者が迷うことなく応援したい店舗へ直接つながる

 

自治体にとっての導入メリットはどこにありますか。

一つは、非常にコンパクトな運営が可能になることです。

通常のふるさと納税では、自治体が問い合わせ対応をしています。クレーム対応、「いつ届くんですか」という電話、商品の配送手配……『ふるさとズ』では、こうした業務を店舗側に担っていただく設計にしています。

店舗には管理画面があり、寄附状況をリアルタイムで確認でき、目の前のお客様に直接対応する。つまり、自治体職員だけが頑張るのではなく、事業者さんも一緒にふるさと納税を盛り上げていくという構造になります。

加えて、配送が関わらない設計なので物流コストがかかりません。2021年の開始当初から「経費を下げましょう」という思想でやっていましたので、まさに今の経費率削減の議論と合致しています。

僕らを導入することで自治体に「余力」を作り、その空いた経費で新たな広告施策や地域プロモーションに投じてくださいとお伝えしています。

事業者のITリテラシーに合わせた複数の寄附認証方式も用意しています。スマホ画面で承認ボタンを押す方式、パソコンでコード確認する方式、二次元コードで電子チケットを読み取る方式、そしてオンラインクーポン方式の4パターンから選べます。

さらに、弊社ではホームページでの案内やDM・チラシのデザイン制作もサポートしており、これらのプロモーション支援は委託料に含まれています。

 

リピート率37%・平均寄附額約12万円の実績

 

具体的な導入成果や反響について教えてください。

導入先のゴルフ場では、リピート率が37%に達しています。一度この仕組みを知った利用者の多くが、毎年寄附をしてくださるようになった。なかには30回以上リピートされている方もいます。

これまで地域の「関係人口」は、イベントに何人来たかといった漠然とした数字でしか見えていませんでしたが、ふるさと納税という寄附金の流れを通じて、「どれだけ深く地域に関わっているか」が可視化できるようになりました。

店舗で3,000万~ 5,000万円を集める事業者さんも出ています。大手ポータルサイトでは埋もれてしまうような、地域に根ざしたブランドや熱いファンを持つお店が、『ふるさとズ』を通じて本来のポテンシャルを発揮しているのです。

高額寄附が動く理由の一つは、リアルに「見て、触って、体験して」から決済できること。高額なものほど、実物を確認しないとなかなか払えませんよね。家具の手触りを確かめて初めて寄附に至る。そういうリアルの接点があるからこそ、一件あたりの平均寄附額が約12万円と高い水準を維持できています。

 

今後、『ふるさとズ』をどのように進化させていきたいとお考えですか。

僕らが本当にこれから力を発揮しなきゃいけないと思っているのは、「リアル版クラウドファンディング」です。

『ふるさとズ』は1円単位で寄附額の組み合わせが可能ですから、たとえば事業者が新商品を開発するときに、「あの店を応援したい」というファンが少額から参加できる。クラウドファンディングのように支援金が集まり、完成したら実際にその店舗を訪れて体験するネット上だけの物語ではなく、リアルにつながっていて、それが町の公園のトイレがきれいになるとか、そういう具体的な地域の変化に結びつく。自治体だけが頑張るのではなく、事業者が自ら発信し、頑張ることが地域の力になる。人の流れや繋がりを、ふるさと納税というお金の流れで可視化する仕組みなのです。

そのために僕らも発信力を高めていきます。現在、X(旧Twitter)は3万人、Instagramは4,000人のフォロワーを持ち、事業者さんへの自社取材を「FAN’s」という媒体として発行しています。

今後は動画や記事コンテンツも充実させ、「この地域にこんないいお店がある」ということをもっと広く届けたい。SNSやHPから決済リンクに直接誘導できるのが僕らの強みですから、認知を取り、ファンをつくり、寄附につなげ、リアルに訪れてもらうこの循環をきれいに回していきたいと考えています。

 

最後に、全国の自治体担当者へメッセージをお願いします。

サービス名の『ふるさとズ』には、自分が関わったふるさとがどんどん集まっていく増えれば増えるほど豊かになるシステムでありたいという願いを込めています。

「比較検討して一つを選ぶ」のではなく、関わった場所がいっぱいあるなという気づきが生まれるサービスにしたかった。総務省が掲げるふるさと納税の理念「愛着を持って応したい」を形にするにもマッチしていると感じています。

私たちは、事業者のITリテラシーに合わせて関わりのレイヤーを変えながら、自治体のご担当者様と一緒に事業者さんの伴走支援をしていきます。ホームページの案内文やDMのデザイン制作、店舗への導入説明まで、弊社が手を動かしてサポートします。お店のファンを地域に巻き込み、事業者とともに新たなマチのファンを創出する。

ぜひこの仕組みを使って、自治体と事業者と寄附者が一緒になって、新しい地域循環のモデルを作っていきましょう。

(取材日:2026年3月19日)

 

 

事業者の声『ふるさとズ』導入店舗インタビュー①

 

アトリエで一つひとつ丁寧に生み出されるWILDSWANS製品

革製品ブランドWILDSWANS(茨城県河内町)

1998年創業の日本の革製品ブランド。茨城と銀座に合計4店舗の直営店を運営するほか、国内大手百貨店や海外のセレクトショップにも展開。

 

WILDSWANS(ワイルドスワンズ) Online Shop

在庫管理の悩みが解消。ECサイトとの連携で利用者が右肩上がりに

当社は手作りゆえに生産数が限られ、大手ポータルサイトでは月に数件しか注文がない状態でした。実店舗で商品の動きが早いため返礼品が品切れになることも多く、在庫管理が難しい状況で、ふるさと納税へのPRには積極的になれませんでした。

そんな折、『ふるさとズ』の「店舗型」という仕組みを知り、大きな魅力を感じました。ちょうど「アトリエ見学バスツアー」を企画していたこともあり、ツアー代金や現地でのお買い物のお支払いにふるさと納税を活用できれば、お客さまにとって大きなメリットになると考えたんです。

2024年6月からは「金額自由入力型」のオンラインクーポン提供も開始しました。ポータルサイトで返礼品として製品を管理するよりも、EC サイトの豊富な品揃えの中からお客さまが自由に選んでいただける点に大きなメリットを感じています。

導入から約1年、物価高や実質賃金の減少といった厳しい経済状況にもかかわらず、ECサイトでの利用者数は右肩上がりに増加しています。自社の売り上げへの貢献にとどまらず、地元・茨城県河内町の活性化にも寄与していることに、大きなやりがいを感じています。

 

事業者の声『ふるさとズ』導入店舗インタビュー②

 

ブランド戦略室 相島氏(左)代表取締役社長 高野氏(右)。 筑後市のショールームにて

家具メーカー 高野木工株式会社(福岡県筑後市)

1942年に福岡県の大川市でタンス製造からスタート。素材を活かすデザインを重視した上質な家具を、筑後市の自社工場で製造。

 

高野木工株式会社のふるさと納税専用ページ

「ふるさと納税でも払えます」の一言から、自然に広がるファンの輪

導入の第一の理由は、お客さまにとってふるさと納税に関する面倒な手間が省けることが大きな決め手でした。

当社の家具は素材を活かすデザインを重視しており、お客さまが仕様を選べるカスタマイズ商品も多いのですが、従来のポータルサイトではシステムの制約上、こうした商品の出品が難しいという課題がありました。

しかし『ふるさとズ』は店頭やオンラインショップへ誘導し決済できるため、自社に登録してある商品をそのまま対象にでき、事務的な手間も軽減されました。

現在は実店舗3店舗とオンラインの両方でご案内しています。店舗ではお会計時に「ふるさと納税でもお支払いできます、いかがですか?」とお声掛けしていますが、意外と興味を持たれるお客さまが多く、会話のネタとしてもスタッフが活用しています。

オンラインでも想定以上に注文が入っており、他のふるさと納税サイトと同程度の利用がある状況です。根底にある「お客さま目線に立ち、お客さまのことを考える」という姿勢を大切に、ふるさと納税を通じた地域貢献にもつなげていきたいと考えています。

 

 

株式会社サンカクキカク

〒830-0033 福岡県久留米市天神町1-1 米城ビルディング10階

https://suncackikaku.com/

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