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自治体インタビュー

“人にしかできない仕事”を全うするために
スポットAI「ToyTalk」 と進める窓口DX

 

転出入の手続きが集中する春の繁忙期、川崎市川崎区役所の区民課窓口では、待ち時間が4時間以上に及ぶこともある。同区は民間提案制度(テーマ型「混雑緩和・快適な待ち時間の創出」)を通じて、株式会社ブリッジウェルのスポットAI「ToyTalk」 を採用。

2026年3月16日から4月17日にかけて、「AI川崎区長」による手続き案内と「かわさきよりみちクーポン」を組み合わせた実証を、川崎区役所で実施した。

 

 

川崎市 川崎区役所 まちづくり推進部
企画課長 成沢 重幸

1996年川崎市入庁。宮前区役所企画課のほか、総合企画局(当時)等で出張所・連絡所の機能再編やコンビニ交付の導入検討、区役所改革の基本方針策定など、区役所改革に関わる業務を歴任。市民文化局を経て2023年4月から現職。区の企画調整や多文化共生などを担う。

 

 

 

 

 

待ち時間の短縮に限界があるなら、“過ごし方”を変える

 

まず、導入の背景となった窓口の課題からお聞かせください。

3月中旬から4 月上旬、転出入を扱う区民課の窓口は大変混雑します。昨年1月に支所の申請・届出の窓口を区役所へ集約した経緯もあり、3月下旬には待ち時間が4時間以上に及ぶことも。機材や人員を混雑期だけ増強することは難しく、短縮には限界があるため、令和6年度の地域デザイン会議で市民の方からいただいた意見もあり、せめて待ち時間を快適にできないだろうか、と。

まずは「待つ場所は庁舎内でなくても良い」という発想から、近隣のカフェと連携して行った実証で手応えを得て、「混雑緩和」と「快適な待ち時間の創出」をテーマに民間提案制度で公募したところ、ブリッジウェルさんが手を挙げてくださったのです。

 

採用の決め手は。

ご提案をいただくまで窓口対応にAIを活用するというアイデアはありませんでした。面白いと思いましたし、決め手は、AIに資料をしっかり読み込ませると、回答にムラが出なかったこと。

窓口の案内は職員の知識や経験に頼りがちで、本来あってはならないことですが、どうしても人によるばらつきが出ます。質問を受ければ人手が取られ、待ち時間も延びてしまいます。その緩和にも有効だと考えましたし、経費負担がなかったことも大きなポイントでした。

 

外国人住民への対応という観点ではいかがですか。

川崎区は人口の9.5%(2026年5月現在)が外国籍の方で、昨年度の転入者では約3割を占めました。混雑期には私も窓口の外で案内をしましたが、体感では半分ほどが外国籍の方で、どうしても時間がかかります。

ToyTalkはスマートフォンの言語設定に応じてその方の言語で案内できるので、非常に助かりますね。

 

「AI川崎区長」誕生秘話

案内役の「AI川崎区長」は、どのように生まれたのですか。

川崎区は東海道の宿場町・川崎宿があったところで、地域の行事では区長が法被を着て参加することもあります。

その法被姿の写真をAIに読み込ませて作ったのですが、最初はかなり写実的だったので、少しだけ親しみやすく可愛いテイストに調整。「区長が出迎えている雰囲気」を意識しましたね。
AI川崎区長への相談はこちらから

 

笑顔で来庁者を出迎えるAI川崎区長
AIと対話をしながらイメージどおりのキャラクターを作れる点も、スポットAI「ToyTalk」の魅力。

 

資料の登録や運用では、どのような工夫をされましたか。

関係する法令をそのまま読み込ませたところ、返ってくる答えが長すぎて(笑)。

来庁者が知りたいのは「できるのか、できないのか」なので、ブリッジウェルさんにご助言をいただきながら、法令は省いて窓口案内などを箇条書きで整理し直すと、レスポンスが格段に良くなりました。

入口や申請用タブレット付近にQRコードを掲示し、住民登録窓口に最も近い階段付近には、A3判の立て看板も設置しました。

 

ブリッジウェルとの協議の中で「チラシの隅では読まれにくい」との助言を受け、QRコードの大きさや設置場所を検討した。

 

運用が始まって、現場や職員の皆さんに変化はありましたか。

窓口外のご案内では転入手続きだけでは終わらないことが多く、「印鑑登録は?」「国民健康保険は?」などご質問が発展し、職員はなかなか離れられません。そのような時に「簡単なご質問はToyTalkで」とご案内できれば、次の方の対応に移れます。

職員側がToyTalkをマニュアルのように使う場面もありました。全業務を把握し切れていなくても、AIに尋ねれば答えが返ってくるので、案内の指針になるという副次効果がありました。

 

繰り返す問合せはAIへ職員は“人が担うべき仕事”へ

 

実証の効果をどのように受け止めていますか。

最も混み合った3月30日・31日には、ToyTalkの利用者数も来庁者数に沿って伸びました。ご質問は転入手続きの方法や所要時間に関することが多く、この種の問い合わせはAIに委ねられる手応えを感じましたね。

 「かわさきよりみちクーポン」は、来庁者数の減少もあり利用件数こそ昨年を下回りましたが、60人待ちでも160人待ちでも待合の混雑はほとんど変わらず。多くの方が外で過ごしてくださり、狙いは達成できたと考えています。「順番を抜かされるのでは」という不安には、お戻りの方のための窓口を設けて対応しました。

 

最後に今後の展望をお聞かせください。

人手不足が進む一方で、行政の仕事は減っていません。繰り返しの問い合わせやウェブサイトに書いてあることはAIに委ね、職員のリソースは個別の事情に沿った相談支援など「人にしかできない仕事」へー働き方はそうシフトしていくと思います。

転出に関しては、マイナンバーカードがあればオンラインで手続き可能になったことにより、来庁者は大幅に減りました。しかし転入では依然として区役所にお越しいただく必要があるので、できるだけ混雑しないよう分散を促せないかと十数年来、私個人として課題認識を持っています。ただ、これはまだ市民になる前の方への広報となるので周知の難しさを感じていますが、ToyTalkが各地で「来訪前」の問い合わせに使われていると伺い、可能性を感じています。

また、外国人住民への生活ルールや災害時の多言語情報など、活用の幅はまだ広げられるはず。オンラインで手続等ができる「行かなくてよい」窓口の取組を進め、一方で相談・支援が必要な方には職員が手厚く向き合うーそんな窓口を目指していきます。

(取材日:2026年 7月16日)

 

株式会社ブリッジウェル提供
スポットAI「ToyTalk(トイトーク)」とは

窓口やイベント会場、避難所など、特定の “スポット” での案内に特化した対話型AIサービス。

現地に掲示されたQRコードをスマートフォンで読み取るだけで利用でき、自治体の規則や案内資料を学習させることで、その場所に応じた回答を返す。

利用者のスマートフォンの言語設定に合わせた多言語対応や、オリジナルキャラクターの設定も可能。

祭事の事前案内や災害時の初動マニュアルなど、自治体での活用が広がっている。

 

AI川崎区長

区民課手続きの窓口案内をしているAI川崎区長のキャラクターはこちら

株式会社ブリッジウェル

株式会社ブリッジウェル 代表取締役の筒井訓章氏のインタビュー記事はこちら

川崎区役所まちづくり推進部 企画課

〒210-8570 神奈川県川崎市川崎区東田町8 パレール三井ビル12階

TEL:044-201-3261(内線:61120)

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