LINEを活用したふるさと納税の新戦略
自治体のリピーター獲得を支援する
COMSBIが自治体と寄附者の架け橋に
ふるさと納税制度は地方自治体に対して、財政収入の拡大や地域振興等のメリットをもたらすが、多くの自治体で寄附者とのつながりが一過性に終わり、リピーターを取り逃がしている現状がある。この課題に対し、LINEを活用した新たなアプローチが注目を集めている。長年のWeb開発経験とLINE API活用のノウハウを持つ株式会社ソニックムーブが開発した「COMSBI(コムスビ)」は、LINEを通じて自治体と寄附者をつなぎ、リピーター獲得と寄附額の増加を同時に実現しようとしている。
株式会社ソニックムーブ LINEビジネスユニット
林 弘一郎
ソニックムーブに新卒より入社。エンジニアとしてシステム開発を担当後、2015年よりLINEプラットフォーム「COMSBI」の立ち上げに携わる。立ち上げ当初より機能提供で終わる関係ではなく、継続した関係性を作ることに注力。LINEを活用した自治体向けサービスを展開し、これまでに行った多くのプロジェクトで成果を上げ、自治体の課題解決に繋げている。
COMSBIによるふるさと納税のリピーター獲得支援
まずは、御社の概要と事業内容についてお聞かせください
私たち株式会社ソニックムーブは、2002年の創業以来、Webを中心としたシステム開発を行ってきました。東京に本社を置き、島根県松江市にも開発拠点を持っています。現在、大手企業を中心に約800社のクライアント様と取引があります。
特に2015年からは、LINEを活用したサービス開発に注力し、公式テクノロジーパートナーとしても認定を受けています。この経験を活かし、私たちは事業者向けのLINE活用サービス「COMSBI」を開発し、提供してきました。
「COMSBI」は、LINEでの顧客管理と売上アップ施策のためのLINE公式アカウントの機能拡張型ツールです。ポイントカード機能やクーポン機能、スタンプラリー機能などにより顧客の購買行動や趣向をLINEを通じて簡単に収集・分析することができます。
多数の企業で活用いただき、顧客獲得において成果を上げています。例えばUCC上島珈琲株式会社様と共同で行った「コーヒースタイルUCC」というサブスクリプションサービスでは、お届けしている豆について苦味や酸味などを軸に味の評価していただきそれに基づいた商品をお客様に提案。マンネリ化を防ぐことができ継続利用のリピーター獲得につながりました。また、ほっかほっか亭総本部様のコインランドリーサービスにおいては、LINEでの決済や洗濯のコース選択が可能なシステムを導入し利便性を高めました。これまで新店情報など地域の方へのご案内は新聞の折り込みチラシがメインでしたが、データ分析で顧客の属性が可視化され、オープンのお知らせや割引クーポンの配布などによる再訪率の向上も実現しています。
自治体に対する支援について、どのようなことをお考えでしょうか
こうした双方向のコミュニケーションやデータ分析によるユーザー属性の把握などCOMSBIの機能は自治体のふるさと納税におけるリピーター施策にも有益であると考えています。事業者向けで培ったノウハウを、自治体と寄附者のつながりづくりに応用することで、新たな価値を提供できると確信しています。
新規獲得に比べてリピーターは約1/5の労力で獲得可能というマーケティングデータもありますが、多くの自治体ではリピーター施策が十分に行われていないのが現状です。LINEは国内で75%以上の人が利用し、既読率も高いため、効果的に寄附者とコミュニケーションを取ることができます。また、自治体のLINE公式アカウントは無償で配信できるという大きなメリットもあります。
COMSBIを活用することで、自治体は寄附者と継続的につながり、地域の魅力や寄附金の使途などを効果的に伝えることができます。これにより、単なる返礼品目当ての寄附ではなく、地域に愛着を持つ真の「ファン」を育てることが可能になるのです。
御社の支援体制や、支援内容の特徴をお聞かせください
私たちの支援の特徴は、COMSBIというツールの提供だけでなく、そのツールを最大限に活用するためのトータルサポートにあります。具体的な支援内容としては、LINE公式アカウントへの友だち獲得支援、効果的な配信内容の企画・制作、セグメント別の配信戦略立案などが挙げられます。
COMSBIは、LINEというプラットフォームの利便性を大幅に向上させるツールです。セグメンLINEの基本機能を拡張し、より効果的なコミュニケーションを可能にします。しかし、ツールだけでは十分な効果は得られません。そこで私たちは、長年培ってきたコンテンツ企画力と制作力を活かし、自治体の情報発信を総合的に底上げすることを目指しています。
例えば、前年度の寄附者に対して、地域の旬の情報や返礼品の新商品情報を効果的にお届けする際、単に情報を羅列するのでは、人気ランキングや生産者の方の想いなど寄附者の心に響く内容を企画・制作します。また、寄附者の興味関心に合わせたセグメント配信を行うことで、より個別化されたコミュニケーションが可能になります。
具体的なLINE構築のステップは?
LINEの活用において最も重要なのは、継続的かつ価値のあるコミュニケーションを行うことです。LINE公式アカウントは各⾃治体に1つしか割り当てられませんので、防災や子育て、移住など様々な配信対象者が混在している状況です。しかし、COMSBIを利⽤することで「昨年のふるさと納税者」をセグメントした状態での 友だち追加が可能になります。これによって寄附金の使途報告や地域のイベント情報、季節の特産品情報など、寄附者に関心を持ってもらえそうな情報を確実に届けることができます。
また、アンケート機能を活用して寄附者の声を直接聞くことも効果的です。寄附者のニーズや興味を把握し、より的確な情報提供や返礼品開発につなげることができます。重要なのは、寄附者を単なる「お客様」としてではなく、地域づくりのパートナーとして捉え、双方向のコミュニケーションを心がけることです。
COMSBIの導入による具体的なメリットについて教えてください
COMSBIを活用したリピーター施策は、自治体の経費負担を減らすことにもつながります。ふるさと納税の分野では自治体が主体的にマーケティング活動を行うことで、様々な面でコスト削減できる施策があり、COMSBIはその取り組みを強力にサポートできる最適なツールだと考えています。
いくつかの自治体では、COMSBIを活用したLINE配信のシミュレーションをさせていただきましたところ、COMSBIを活用したLINE施策と組み合わせることで、コスト削減により自治体の実質的な収入を大幅に増やすことが可能になることが分かっています。
さらに、LINEを活用することで、従来の紙のダイレクトメールなどと比べて、情報発信のコストを大幅に削減することができます。また、即時性の高いコミュニケーションが可能になるため、タイムリーな情報提供や迅速な問い合わせ対応なども実現できます。ただし、ここで重要なのは、単にコストを下げることだけが目的ではないということです。自治体が主体的にコミュニケーションを行うことで、地域の魅力をより深く、より効果的に伝えることができます。
リピーター獲得以外にも、何か特徴的な取り組みはありますか?
はい、現在ある自治体とは、自治体独自の特設サイトの制作についてもご相談いただき、提案中です。これにより、ポータルサイトの利用料を抑え、寄附者への還元率を上げた特別な返礼品を提供できるようになります。また、自治体の魅力や寄附金の使途を丁寧に伝えることで、単なる物品の交換ではなく、地域づくりに参加しているという実感を寄附者に持ってもらえるよう工夫しています。これは、持続可能な関係人口の創出にもつながると考えています。
「飛び込み力」が未来を拓く、自治体と寄附者、東京と地方を繋ぐ架け橋になりたい
林さんご自身のふるさと納税や地方に対する思いをお聞かせください
地方には豊かな自然や伝統文化、温かいコミュニティがあります。例えば、私の故郷の島根では、出雲大社や石見銀山といった歴史的な資源だけでなく、地元の人々が大切に守ってきた伝統行事や、都会では味わえない人と人とのつながりがあります。
ふるさと納税は、まさにこの地方の魅力を全国に発信できる絶好の機会だと考えています。ふるさと納税で地方を知ってもらい、それだけにとどまらず、LINEという新たなプラットフォームを活用することで、継続的につながっていくことができることにより多くの方々に地方の魅力を知っていただけるのではないでしょうか。
私自身も体感していますが、地方では新しい考えや外部の視点を取り入れることに慎重な面もあります。これは決して悪いことではなく、地域の独自性を守る上で重要な特性だと思います。しかし、この特性がときに新しい取り組みの障壁になることもあると感じています。
新しい取り組みをする際に大切なのはどのようなことだと感じていますか?
私は島根出身ですが東京での生活の中で、「飛び込む」ことの価値を改めて学びました。地域の神社の氏子として活動を始めた経験が、特に印象に残っています。最初は遠慮がちでしたが、思い切って参加してみると、想像以上に温かく迎え入れてもらえました。今では、神輿担ぎなどイベントごとには必ず出席しています。私にとっては第二のふるさとともいえる場所になり、もっと地域のために役立ちたいという気持ちも芽生えました。東京は人と人との繋がりが希薄だ、とよくいいますが、そんなことはなくて、一歩踏み出す勇気さえあれば、新しい扉が開きます。この経験は大きな気づきとなり、ふるさと納税を通じて地方と都市をつなぐ架け橋になりたいという思いが生まれました。LINEという身近なツールを使って、地方の魅力を都市部の人々に伝え、同時に地方の方々にも新しい視点を提供する。そうすることで、お互いの理解を深め、持続可能な関係を築いていけるのではないでしょうか。
形式的なサービス提供だけでなく、自治体の方々と一緒に汗をかき、地域の課題に真摯に向き合う。そんな姿勢でCOMSBIを通じた支援を行っていきたいですね。
(取材日 2024年8月7日)