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事業者インタビュー

200年変わらなかった聴診をAIにより進化、「未来の心音」を守る
─「超聴診器」が拓く、心臓スクリーニングの新しいかたち

人口減少と医療従事者不足が進むなか、地域における心疾患の早期発見は、自治体・医療機関の双方にとって重要なテーマとなっている。超高齢社会が続く日本では、今後さらに高齢化が進むことで、「心不全パンデミック」とも呼ばれる心疾患の増加が見込まれている。初期は自覚症状の出にくい心臓弁膜症や心不全といった疾患のリスクをどう拾い上げるかは、大きな課題だ。 

AMI株式会社が開発する「超聴診器」は、心音と心電を同時に取得し、AIで心疾患のリスクを可視化する次世代の医療ソリューション。「いつでも、どこでも、誰でも」心臓のスクリーニングを受けられる世界を目指す代表取締役CEO・小川晋平氏に話を伺った。 

 

 

AMI株式会社 小川 晋平(代表取締役CEO・医師) 

熊本大学卒業後、北海道・富良野での初期研修を経て、熊本に戻り大学病院・救急病院で循環器内科医として勤務。京都の大学院で医療経済学を学ぶ傍ら、2015年にAMI株式会社を設立。ドクターヘリの最前線で経験した遠隔医療の課題感に加え、起業翌年に発生した熊本地震での災害医療ボランティアでの体験を原点に、心音×心電×AIの「超聴診器」開発を主導している。


 

 

治療の進歩と災害医療 ─ 「早期発見」への想い

 

事業を立ち上げられた経緯と、創業に込められた想いをお聞かせください。 

熊本で循環器内科医として勤務するなか、2013年頃からカテーテルを使った内科的な医療技術がどんどん発展し、心疾患治療の選択肢が大きく広がりました。だからこそ「早期発見」がより重要になる──。そう感じたことが、創業のきっかけの一つです。当時、熊本でドクターヘリやドクターカーに最も多く乗務していた私でしたが、どんなに早く救急搬送しても、症状が重いほど治療のハードルは上がります。現地の遠隔医療の質が上がれば、もっと救えるのではないかと考えていました。 

決定的だったのが2016年4月の熊本地震です。すぐに仕事を引き継ぎ、約5,000錠の薬をドクターカーに積み込んで被災地に向かいました。そして、夜中の避難所や老人ホームを回るボランティアをするなかで、災害医療にも貢献できる医療機器の必要性を痛感したのです。「治療の進歩」「遠隔医療の質向上」「災害医療への貢献」──この三つが、AMIの十年を貫いてきた原点になっています。 

 

「いつでも、どこでも、誰でも」というコンセプトに込められた想いは。 

実は、聴診器そのものを作ろうと思って起業したわけではないんです。「離島・へき地にクラウド総合病院をつくる」というのが創業時の構想でした。とはいえ、離島にCTやMRIといった大型機器を配置するのは現実的ではありません。

そこでまず取り組んだのが、200年間ほとんど形を変えていない「聴診」のイノベーションです。「超聴診器によって心疾患を見逃さず、一人でも多くの方を助ける」、そして「未来の心音を守る」をパーパスとして、十年間取り組んでまいりました。 

 

心音×心電×AI ─ 30秒で心疾患リスクを可視化する 

 

提供されているソリューション「超聴診器」について、教えてください。 

「超聴診器」は、ハードウェアである心音図検査装置と、クラウド上の解析サービス「クラウド超診®」、そして自社開発のAIアルゴリズムを組み合わせた医療ソリューションです。

胸の表面にデバイスを当てて、わずか8秒間の心音・心電データを取得し、独自のアルゴリズムで解析。心負荷指数、心雑音判定、リズム不整判定、そして総合判定としての「心疾患指数」をレポートにまとめて返却します。

心電図検査よりも早い30秒程度で検査が完了するため、待ち時間や身体への負担が少ないというメリットもあります。薬事承認上は、これまで血液検査でしか測れなかった心不全マーカー「BNP」の推定や、大動脈弁狭窄症のリスク推定など、医師の診断補助という位置づけです。 

 

10年をかけて構築・蓄積した技術と医療データをもとに、患者の心音・心電を解析。精密なレポートで医師の診断をフォローする

超聴診器による解析結果のレポート※イメージ図です。実際に提供するレポートとは異なる可能性があります

 

開発の道のりはスムーズなものでしたか。 

一言で言えば、「十年かかりました」ですね(笑)。最初は当直室にはんだごてを持ち込んで、院内PHSが鳴らない夜の時間に工作するところからのスタートで、センシング部の試作だけでも1,000パターン規模を重ねてきました。 

AIを医療機器として実装するには、書面同意のもとに収集した精緻な医療データが不可欠です。

熊本大学・鹿児島大学・京都大学など複数の医療機関にご協力いただき、心エコーや血液検査の結果と紐づいた心音データベースをゼロから構築しました。

生成AIのように外部のモデルをAPIで呼んで組み合わせるのではなく、ハードウェア・データベース・AIアルゴリズムをすべて自社で内製しているのが、私たちの大きな特徴です。

2023年に心音図検査装置として薬事承認を取得し、2024年に無線版とクラウド超診®をリリース。2025年にはAIを用いた診断補助機能がプログラム医療機器(SaMD)として2項目で承認され、2026年はいよいよ社会実装の年と位置づけて取り組んでいます。 

 

自社のメディカルチームによるサポートも特徴とお聞きしました。 

「クラウド超診®」は、AIによる判定に加えて、医師・看護師・臨床検査技師からなる自社メディカルチームが遠隔で読影サポートを行うサービスです。

現場のドクターから相談があれば医師同士でやり取りができる仕組みも備えており、チームは日々、心音の読影トレーニングを重ねています。

心音図という分野においては、世界トップクラスの読影力を持っていると胸を張って言える集団です。エビデンス構築にも力を入れており、2025年には日本循環器学会において、最優秀論文として評価をいただきました。 

ディカルチームによる遠隔聴診の様子。心音の読影トレーニングを積んだ精鋭チームが、全国の医師をサポートする

 

診察室の聴診を、検査室にタスクシフト 

 

実際の医療現場では、どのように活用されるのでしょうか。 

わかりやすいのは、血圧計のたどってきた歴史との比較です。

30〜40年前は、血圧は診察室で医師や看護師が測るものでしたが、今では待合の廊下や家庭で測ったものを医師が確認する時代になりました。聴診もこれと同じように、診察室の中で医師が行うものから、検査室や検診の場でも安定した品質で実施できるものへと変えていきたい。これが、私たちの考える「タスクシフト」のイメージです。

検診の領域では、弘前大学が地域検診で超聴診器を活用し、心臓病が発見されて治療につながった事例を学術論文として報告。長崎の五島列島で行われた離島の集団検診では、コホート研究の論文が学術誌に受理されました。透析クリニックでの心疾患スクリーニングや、術前検査、ICUでのボリューム評価など、診療科を問わず幅広い場面でも導入が進んでいます。 

 

利用されている医師からは、どのようなお声が届いていますか。 

横須賀で在宅医療も含めた循環器診療をされている先生が、ある学会で「超聴診器は素晴らしい医療機器だ」と発表してくださいました。

ユーザーご自身が良さを語ってくださる姿には、本当に勇気づけられます。別のクリニックの先生からも、「患者さんへの負担が少ない割に、得られる情報が非常に多い。導入して本当に良かった」「5年後はクリニックの標準的な検査になっているのではないか。電子カルテを使ってDXを進めているクリニックなら、皆持っているはず」といったお声をいただいています。 

 

軽量・コンパクトなデバイスを胸に当てるだけ。聴診音のデータはリアルタイムでクラウド上に共有されるため、遠隔医療や災害医療の現場でも活用が期待される

 

自治体主導で「地域の心臓を守る」 
子どもから高齢者まで使える検診のかたち 

 

自治体・地域医療への展開について、お考えを聞かせてください。 

私たちのソリューションは、対象人数や設置する機器台数、オンラインサポート・現地支援の範囲に応じて、自治体の予算規模に合わせた導入設計が可能です。単発のイベントや小規模な実証事業であれば年間100万円規模から開始でき、地域全体を対象とした検診事業では1,000万円規模、さらに数千万円規模まで段階的に拡張できます。

心不全パンデミックと言われる時代に、自治体の予算を活用して地域住民にスクリーニングを提供できれば、自治体と医療現場の双方にメリットのある関係になり得ると考えています。

実際、鹿児島県の垂水(たるみず)市では、大学の先生方が10年間にわたって地域住民の健康診断を続けるなかで、超聴診器も組み込んで運用されています。弘前大学による地域検診や、長崎大学が主導する五島列島の集団検診も同様に、地域と大学・企業が連携するかたちで活用が進んでいます。 

加えて、超聴診器は何歳の方にも使える検査機器です。日本では小学校1年生・中学校1年生・高校1年生で学校心臓検診が行われていますが、ここに超聴診器を組み込んでいただければ、自治体としても「子どもの心臓を守るまち」というメッセージを発信でき、児童・生徒数 × 1,000円程度といった形で予算の試算もしやすい。高齢の方も学校の児童・生徒も、地域でまるごと心臓を守る仕組みが描けると考えています。 

 

自治体側が検討を進める際の流れについて、教えてください。 

まずは、私たちAMIにお声がけください。導入初期に必要となる医療機関へのご説明やデモは、当社(または販売パートナー)が主導してしっかりサポートします。導入時のネックになりやすいのは医療機関側のコスト負担で、1件あたりの解析料を診療報酬で賄える設計とはいえ、医療機関の経営は厳しい状況にあります。そこを自治体の補助金・予算でカバーいただけるのであれば、医療機関にとってのハードルは大きく下がります。機器のレンタル・教育・遠隔読影サポートを組み合わせた運用設計を、自治体の皆様とご一緒に検討させていただきたいと考えています。 

 

自治体の皆様へ ── 「未来の心音」を、まちぐるみで守る 

 

最後に、自治体・医療関係者の皆様へメッセージをお願いします。 

「AI vs 人間」という議論は、医療の世界でも他業界と同じく語られがちです。しかし私たちは、AIと医師が補い合う「共存」のかたちを大切にしてきました。30秒で完了する超聴診器による検査と、世界トップクラスの読影力を持つメディカルチームの組み合わせを、地域医療の現場でしっかりと役立てていきたいと考えています。

ご高齢の方の心不全を見つけて治療につなげることも、これから長い人生を歩むお子さんの心疾患を早期に発見することも、いずれも意義のある取り組みです。「未来の心音」を、自治体・医療機関・地域住民の皆様とご一緒に守っていけるよう、まずは情報収集の段階からお気軽にお声がけください。 

(取材日:2026年5月13日)

 

 

AMI株式会社

所在地:鹿児島県鹿児島市東千石町2-13-302 

代表取締役CEO:小川 晋平 

設立:2015年 

事業内容:AI医療機器・遠隔医療システムの研究開発および社会実装 

お問い合わせ:follow@ami.inc

URL:https://ami.inc/

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