深刻化する職員不足とデジタル人材の採用難のなか、自治体は 「今いる職員のスキルをどう引き上げるか」という課題に向き合っている。しかし研修は「受けて終わり」になりがちだ。
DX推進に必要となるAI、自動化ツール、オフィスソフトからプログラミング、CADまで、幅広いテックスキル教育を手がける株式会社 VOSTは、人材育成プラットフォーム 「GETT Proskill」で、DXレベルの可視化からハンズオン研修、学びを業務改善に落とすアウトプット、その先の伴走支援までを一続きに支える。

株式会社VOST 最高技術責任者(CTO)
三谷 大暁
同社の立ち上げメンバー。AI・IoT・3D CAD/CAMソフトウェア等の最新技術を複合的に融合し、製造業のDX、道路インフラの異常検知AI、建築関係のノウハウ蓄積AI等、幅広い業種へ多数のDX推進・AI導入コンサルティングを実施。大手企業グループ向けに1万人規模のDX人材育成プログラムを手掛けるなど、組織全体のデジタル変革に向けた教育体系構築にも豊富なノウハウを持つ。
著書「Fusion 360操作ガイド」シリーズ(カットシステム)等。
職員の底上げと、地域企業への支援と
自治体のDX人材育成には、どのような課題がありますか。
二つの側面があると考えます。一つは、職員の皆さん自身がどうDXに取り組むかという部分です。急速に進化する生成AIの活用も、複数システムの最適化も進めたいけれど、どう取り組めばいいのか分からない、配られたツールを使いこなせない、組み合わせ方が分からない─。特に地方は採用難で、今いる職員がスキルアップして補う必要が高まっています。
もう一つは、地域の中小企業を支えるという側面です。助成金や補助金はあっても一歩を踏み出せない企業は多く、最新情報も届きづらい実情があります。そこに自治体側からAIやITのスキルを届け、生産性を上げるきっかけを作ろうとされているように感じます。
「GETT Proskill」 の 特徴 を教えてください。
弊社のミッションは「テックスキルを解放し、社会から“できない”をなくす」ことです。仕事のやり方を変え、より付加価値の高い仕事ができるようになる。自治体であれば生産性を上げ、より良いサービスを市民・県民に届けられる─。そのゴールには、AIだけでも、ITの基礎だけでも到達できません。
「GETT Proskill」は、業務改善のノウハウも含め、複数の技術を掛け合わせて体系的に活用できるカリキュラムを網羅的に揃えています。「この作業はそもそも何のためにあるのか」と、業務フローを振り返るマインドセットから学べるようにしています。
DXレベルを可視化し、仕組みで成長を支える
研修に先立ってDXレベルを可視化される狙いとは。
AI、業務の自動化、Excelなどのオフィスアプリケーション、セキュリティやクラウドー複数の技術について、まず最低限の概要を知る必要があると考えています。
たとえば「既存のツールにAPIがあるから接続できるね」という会話が通じるかどうか。その理解度を見えるようにするのがレベルチェックです。
可視化すれば、データに基づいて育成を進められます。ある企業では、思いもよらない部署の若手がAIで高得点を出しました。趣味で生成AIを使い込んでいたそうで、DX推進側に抜擢することに。隠れた才能の発掘にもつながります。

個々のDXレベルを可視化した「DSIレポート」。得意分野や苦手分野が一目で分かり、今後受講すべき研修内容や人員配置の参考にも。全職員の学習進捗を把握することで、組織全体の成長スピードも向上する。
カリキュラムや教材づくりで大切にされていることは。
カリキュラムはすべて自社開発で、コンテンツ作成のメソッドも自社で用意しています。よくある「ここにこんな機能があります」という機能ベースの研修では、「どこで、いつ使うのか」に紐付かないので、どの講座も業務課題からスタートさせています。Excelで自動計算のできる帳票をつくる、といった具体的な課題を設けて、手を動かしながら進めていただきます。
また、指示どおりにやるだけでは面白くありませんから、あえて間違えさせる、つまずかせる工夫も入れています。進めていくとエラーが起きる。そのときに「実はこういう機能があって、こうするとうまくいくんですよ」とお伝えすると、「便利ですね」となって理解が進みますし、楽しく取り組むことができるんです。
eラーニングでもナレーション形式ではなく、講師自身の言葉で語りながら、対面講習と同じようにハンズオン形式で進めます。
研修を 「受けて終わり」 にしないための工夫をお聞かせください。
たとえば「何百講座が受け放題」のようなオンライン研修を、フル活用できる人はほんの一部でしょう。「各々で頑張れ」と言っても難しいので、仕組みが必要だと思います。ワークショップで自分の業務を棚卸しし、課題に対してどの技術を組み合わせるかを一緒に考える。「この作業フローのこの部分はAIに置き換えられるのではないか」などのアイデアを、業務改善シートに何件書き出す、というところまで仕組みに落とし込みます。
そこまでやると「ためになりました」で終わることはなくなります。最終的には「自走」することを目標に、出てきたものをアウトプット・プロジェクト化し、片手間ではなく時間を確保して組織がバックアップする。推進リーダーやアンバサダーなどの役割も定義していく。ただし、ある組織でうまくいった体制が他でも通じるとは限りません。各組織に合ったやり方を模索しながら進めるのが良いでしょう。
より良い未来を目指し“底上げ”と“高み”を両軸で
研修のその先の実践やプロジェクト推進はどう支援されますか。
業務の棚卸しから、改善と効率化、その先のシステム開発まで、学んだ内容をもとに一緒に進める伴走型のコンサルティングをしています。力を入れているのは調達の場面です。入札で事業者を決めても、導入後に「使いづらい」と感じてしまうのは、使う側のあるべき姿をシステムの要件に落とし込むところが難しいからだと思っています。
今は生成AIで、実際に動くモックアップがものすごい速さで作れます。職員さん自身が作ってみて要件を整理できる。そのイメージを開発会社とのやり取りに使えば齟齬が起こりづらく、現場が本当に欲しいものが手に入ります。要件定義や仕様書づくりに生成AIを活用するための支援も行っています。
自治体や地域と、どのような未来を描いていきたいですか。
生成AIひとつをとっても、議事録の要約程度に留まっている方と、アプリケーションを自作して業務を何十倍も速く動かしている方との乖離が、非常に大きくなっています。
行政目線では「より広く、より優しく」となりやすいのですが、底上げをする観点と、高みを目指す方を支援する観点。この二軸を同時に大事にする必要があると感じます。
結局は「私はパソコンが苦手だから」という枷をいかに外せるか。一歩を踏み出してAIに話しかけてみたら、「こんなことも答えてくれるんだ、ではこれはどうだろう」と広がっていく─。その最初の気づきのきっかけになればいいですね。
職員の残業を減らし、より価値の高いサービスを届け、日本全体をより良くするお手伝いをしたいと思っています。
(取材日:2026年7月30日)





