なぜ、御社の「良い提案」は自治体に届かないのか?
「素晴らしいソリューションを持っているのに、自治体の窓口で話が止まってしまう」 「担当者は熱心なのに、翌年度の予算がつかない」 「実証実験(PoC)までは行くが、本導入に至らない」
今、官民連携(PPP/PFI)やBtoG(Business to Government)ビジネスに取り組む民間企業の皆様から、このようなお悩みを伺う機会が急増しています。
人口減少、少子高齢化、インフラの老朽化、そして待ったなしのDX(デジタルトランスフォーメーション)――。日本の自治体が抱える課題は年々複雑化しており、もはや行政単独のリソース(ヒト・モノ・カネ)での解決は不可能です。
そのため、国も「新しい公共」を掲げ、自治体側も本音では「民間企業の力を借りたい」と強く願っています。
それにもかかわらず、なぜ多くの連携プロジェクトは頓挫してしまうのでしょうか? なぜ、熱意ある提案が、役所の分厚い壁に跳ね返されてしまうのでしょうか?
その原因は、民間側の提案力不足でも、自治体側のやる気不足でもありません。 両者の間にある「構造的なミスマッチ(ボタンの掛け違い)」と、そこに対する「相互理解の不足」にあります。
一般社団法人自治体DX推進協議会(GDX)では、この現状を打破すべく、全国250自治体の現場職員を対象に『官民連携のあり方に関する実態調査(2025年実施)』を行いました。 そこから見えてきたのは、「現場は共創を求めているが、組織が追いついていない」という自治体職員の切実な叫びでした。
本記事では、調査データから浮き彫りになった自治体のリアルな現状を紐解き、停滞するプロジェクトを成功へ導くために必要な「4つの転換点(パラダイムシフト)」について、詳細に解説します。 これは、単なる営業ノウハウではありません。地域課題解決のパートナーとして選ばれるための、マインドセット変革の書です。
データが語る自治体の「理想」と「現実」 ~現場職員が抱える、三重苦のジレンマ~
まず、私たちが直面している「すれ違い」の正体を、データで確認してみましょう。多くの企業が抱く「お役所仕事だから変えられないのだろう」というイメージは、半分正解で、半分間違っています。
現場の7割は「対等なパートナー」を求めている
従来の官民連携といえば、「行政が仕様書でやることを決め、民間がそれを安く請け負う」という受発注の関係が一般的でした。企業側も「仕様書通りに納品すること」がゴールでした。 しかし、今回の調査で「今後の民間との関係性」について尋ねたところ、驚くべき結果が出ました。
「対等な『共創』関係へ移行すべき」:56.4%
「可能な限り『共創』関係へ移行すべき」:13.6%
なんと、約70%の職員が、従来の下請け的な関係に限界を感じているのです。 現場の職員は気づいています。「仕様書通りの業務委託」だけでは、複雑化する地域課題に対応しきれないことに。彼らは、単なる「業者」ではなく、共に頭を悩ませ、プロの知見で導いてくれる「パートナー」を求めています。
しかし、8割の自治体には「組織戦略」がない
一方で、「官民連携の取り組み状況」について尋ねると、衝撃的な事実が明らかになりました。
「全庁的に方針を定め、戦略的に推進している」:わずか5.6%
残りの約8割は、「各部署(原課)が個別に実施している」か「あまり活発ではない」という状態です。さらに、約6割(59.6%)の自治体で「官民連携の専門部署や明確な担当者が不在」という結果が出ました。
これが何を意味するか。 それは、「官民連携の成否が、たまたまその席に座っている担当者個人の『熱意』や『スキル』に依存している」ということです。
組織としてのバックアップ体制がない中で、担当者は孤独に戦っています。 「良い提案だけど、どうやって契約すればいいか分からない」 「前例がないから、財政課を説得できない」 こうした組織内部の壁に阻まれ、担当者が疲弊してしまう。これが、多くのプロジェクトが「検討します」で止まってしまう真の理由です。
具体的な障壁:ヒト・カネ・評価の壁
さらに、連携を阻む具体的な障壁についても見てみましょう。
人材不足(62.8%): 法務、会計、契約などの専門知識を持つ職員が足りない。
財源不足(55.6%): 新しいことに挑戦する予算(特に継続予算)がない。
評価の困難さ(47.6%): 費用対効果や成果をどう測ればいいか分からない。
この「現場の熱量(理想)」と「組織の未整備(現実)」のギャップを埋めること。 それこそが、民間企業が提案時に果たすべき最大の役割であり、信頼を勝ち取るための鍵となります。
第2章:官民連携を成功に導く『4つの転換点』
~企業側が提示すべき、新しいアプローチ~
では、このギャップをどう乗り越えればよいのでしょうか。 調査結果を分析すると、成功しているプロジェクトには共通して4つの「発想の転換」が見られました。これらは、企業側が自治体へアプローチする際の「チェックリスト」としても活用できます。
転換点 01【体制】~「個人の頑張り」への依存から、「組織の仕組み」への昇華
▼ The Problem:異動によるリセット
自治体職員には、2〜3年ごとの「定期異動」がつきものです。「せっかく熱心な担当者と信頼関係を築いたのに、春の異動で担当が変わり、プロジェクトが白紙に戻った」という経験をお持ちの方も多いでしょう。 これは、連携が特定のスーパー公務員の属人的な能力に依存している「点の連携」だから起こります。
▼ The Solution:持続可能な「面の連携」へ
企業側は、提案の中に「担当者が代わっても回る仕組み」を組み込む必要があります。
企画部門を巻き込む: 目の前の担当課(原課)だけでなく、庁内の調整役である企画課やDX推進課を巻き込んだプロジェクトチームの組成を提案する。
ナレッジの形式知化: 属人性を排除するため、詳細な「運用マニュアル」や「業務フロー図」を作成し、誰が担当になっても一定のクオリティを維持できる状態を作る。
事務局機能の代行: 庁内調整や議会対応のための資料作成など、職員の手が回らない部分を企業側が「事務局」としてサポートする。
転換点 02【関係性】~「仕様書の発注」から、「課題設定からの共創」へ
▼ The Problem:仕様書待ちの受動的姿勢
「入札の仕様書が出てからでは、提案の余地がない」。これは多くの企業が感じる壁です。仕様書に行政側の要望が固まりきった段階で参入しても、できるのは「価格競争」だけです。 「言われた通りに安くやります」というスタンスでは、民間の強みであるイノベーションは発揮できません。
▼ The Solution:上流工程(課題設定)への参画
調査でも、自治体は民間に「専門知識・ノウハウ(73.2%)」や「企画提案力(45.2%)」を求めています。 成功する企業は、仕様書ができる前の段階、つまり行政が「何が課題なのかモヤモヤしている段階」から入り込んでいます。
Why(なぜ)の共有: 「どうやるか(How)」の前に、「なぜやるか(Why)」を対話する。サウンディング型市場調査や勉強会に積極的に参加し、課題の本質を一緒に探る。
プロとしての診断: 行政が見落としている課題を、民間のデータや他地域の事例を用いて可視化する。「御市の課題はAだと思われていますが、実はBに根本原因があります」という診断こそが、信頼の第一歩です。
転換点 03【財源】~「補助金の消費」から、「稼ぐ力の創出」へ
▼ The Problem:補助金切れ=事業終了
「国の補助金が取れたのでやりましょう」というスタートは、官民連携で最も多いパターンの一つです。しかし、調査では84.4%の自治体が「補助金終了後の事業継続」に強い不安を感じています。 「初期費用は補助金で賄えますが、来年以降のランニングコストは一般財源(市の税金)から出してください」という提案は、財政難の自治体にとって「時限爆弾」を渡されるようなものです。
▼ The Solution:地域内経済循環モデル(自走型)
これからの官民連携のキーワードは、「稼ぐ公共」です。 事業そのものが収益を生み出し、その利益で運営費を賄う、あるいは地域課題解決に再投資する「自走型モデル」の提案が不可欠です。
Partner’s Mindset 提案書に必要なのは「導入費用の見積もり」だけではありません。「3年後、補助金が切れた後にどうやって自走するか」という収支シミュレーション(PL)です。「この事業はコストではなく、将来の財政負担を減らす投資です」と言い切れるビジネスモデルを提示しましょう。
転換点 04【マインド】 「リスク回避(減点主義)」から、「リスク共有(加点主義)」へ
▼ The Problem:無謬性の壁
行政組織は本質的に「無謬性(間違いがあってはならない)」を求められます。そのため、どうしても「前例がない」「実績がない」ことに対して及び腰になります。 企業側が「リスクは行政が負うべき」「確実に利益が出るまで動かない」という姿勢では、この壁は崩せません。
▼ The Solution:実証実験(PoC)とリスクの分担
調査では、自治体は民間に「リスク共有の姿勢(32.4%)」を求めています。 「絶対に失敗しません」という嘘をつくのではなく、「新しいことにはリスクがある」と双方が認め合い、そのリスクをどう分担するかを握ることが重要です。
スモールスタート: いきなり全庁導入を目指すのではなく、「まずは特定のエリア・期間で実証実験(PoC)を行い、共に効果を検証しませんか?」と提案のハードルを下げる。
Partner’s Mindset 「実績がないから採用されない」と嘆くのではなく、「前例がないからこそ、御市がファーストペンギン(先駆者)になる価値があります」と伝えましょう。そして、「そのためのリスクは当社も一緒に背負います」という覚悟を示すことが、保守的な組織の扉を開きます。
第3章:選ばれる企業になるための「セルフチェックリスト」
以上の「4つの転換点」を踏まえ、御社の自治体向け提案が「選ばれる内容」になっているか、改めて確認してみましょう。
□ ターゲットは適切か?
担当者個人の熱意に頼りすぎていないか?
その背後にいる「決定権者」や「関連部署」を意識した資料になっているか?
□ 提案のタイミングは適切か?
仕様書が出てから動いていないか?
課題が顕在化する前の「相談相手」になれているか?
□ 「持続可能性」を語れているか?
「安さ」や「機能」だけでなく、「将来の財政負担軽減」や「地域での収益化」を提示できているか?
補助金が切れた後のストーリーを描けているか?
□ 不安を取り除く材料はあるか?
「実績がない」ことをカバーする「実証実験プラン」や「伴走支援体制」を用意しているか?
職員の手間を増やさない配慮(導入支援、マニュアル作成、住民対応代行など)があるか?
おわりに:自治体は「良きパートナー」を待っている
今回の調査結果を通じて見えてきたのは、自治体職員の皆様もまた、旧来の慣習や組織の壁に悩みながらも、「地域を良くしたい」「民間と対等に連携したい」と強く願っている姿です。
官民連携は、決して企業が自治体を「攻略(Conquest)」するものではありません。 地域課題という共通の敵に立ち向かうための「同盟(Alliance)」であり、信頼に基づく「パートナーシップ」です。
企業側が、自治体の抱える構造的な課題(人手不足、縦割り、財政難、前例踏襲)を深く理解し、「私たちがその壁を一緒に壊します」「面倒な調整は私たちが引き受けます」と手を差し伸べることができれば、信頼関係は劇的に深まります。
「御社と組んでよかった。おかげで地域が変わった」
そう言われる未来を目指して、まずは「提案」の形を、下請け型から共創型へとアップデートしてみませんか?
【ご案内】GDX(一般社団法人自治体DX推進協議会)について
私たちGDXは、課題を抱える自治体と、ソリューションを持つ企業の皆様をつなぐプラットフォームです。 「現場は共創したいが、組織の仕組みがない」「企業は良い技術を持っているが、伝え方が分からない」。この巨大なギャップを埋めるために、私たちは活動しています。
マッチング事業: 「どの企業に相談すればいいかわからない」という自治体と、「技術はあるが接点がない」という企業の間に入り、最適なパートナーシップをコーディネートします(実績:50社・800件以上のマッチング)。
情報発信・メディア事業: 会報誌『自治体DXガイド』や各種セミナーを通じて、現場の生の声や先進事例を発信しています。
「自社の技術を地域課題に役立てたい」「自治体との接点を作りたいが、方法がわからない」とお考えの企業の皆様。ぜひ一度、GDXにご相談ください。共に、日本の地域をアップデートしていきましょう。
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